更新日:2008.4.30
「命の重み、大切さって何?」(前編)
長男・哲朗誕生の日のことを、僕は決して忘れない。
筋ジストロフィー症宣告から6年目の32歳。
当時、病はものすごいスピードで進んでいた。
まるで由子のお腹が大きくなるのと反比例するように、
僕の運動機能は急激に衰えていた。それでも僕は歩きたかった。
間もなく歩けなくなる、だから一歩でも歩きたかったのだ。
手に力が入らないので、片手にはT字型の杖を包帯でぐるぐる縛り付け、
もう片方の脇は身重の由子に支えられ・・・。
倒れそうになる僕をかばって、由子は切迫流産の危機にさらされたこともある。
こうして10ヶ月。いよいよ陣痛が始まった。
が、微弱陣痛で2日たっても生まれない。
主治医から
「母子ともに危険、帝王切開の了承を」と言われたときには、
少々のことでは動じない僕が
「どうにかして女房と赤ん坊を助けてください、どんな状態でもいい、
命だけは助けてほしい」と医師にすがり、神様と必死の駆け引きをしていた。
やがて、「オギャー」
分娩室から特大の産声が聞こえた。
(次回につづく)
|