更新日:2008.8.27
「人間は、なぜ働かないといけないの?」(前編)
人はなぜ、働くのか。もちろん、働かなければお金がもらえない。でも、それだけが理由なのだろうか。
「手足も動かず寝返りもできない体なのに、なぜ春山さんはそんなに働くのですか。私たち健康な者だって、春山さんについていけない。でも、何か生き急いでいるような気もするのですが・・・」
僕を取材した新聞記者がこう尋ねた。言われてみれば、なぜこんなにも働くのか。首から下の身体機能は全廃しているのにここまで働かなくてもいいのかもしれない。それなのに、家族ですら「お父さん、時には休んだら」と声を掛けるほど働いている。僕はしばらく考えた後、「生き急いでなんていませんよ。人生は長さが大事なのか、それとも生き抜いたその質が大事なのか」と、少しはキザな台詞も付け足しながら「僕は毎日が楽しくって、有難くって、仕方ないんですよ。僕を頼りにしてくれる仕事の仲間がいること、難しい仕事を解決した時の何ともいえないうれしさ。だから、まだまだ働き続けますよ」と答えた。
もし僕が健康であったなら、こう答えたかどうかは分からない。ただ、難病をきっかけにこの体からいろんなものを失くし、一方で健康であったらなかなか見つけることができない「価値」を一つひとつ見つけ出したとき、世界は変わった。
(次回につづく)
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