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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

子供たちへ

メッセージ11(後編)
更新日:2009.2.4
「豊かさの中で、失ったものって?」(後編)

いよいよ大晦日。幼い僕にも大人たちの緊張と期待が伝わる。
「今日は忙しいからね。お父さん、早くみんなを銭湯に連れて行って。」
忙しく働く母の声に急かされた父と兄と銭湯へ行く。
当時の銭湯は子どもたちにとってはパラダイス。
とりわけこの日は、お正月は何をして遊ぶか、お年玉で何を買うかと、
いつになくみんなはしゃぎ回る。
そしてコーヒー牛乳を一本買ってもらって家路に着く。
母はさらに忙しく新年の準備をしている。
「明日はこれを着て、おばあちゃんの家に挨拶にいくのよ」と、
兄弟それぞれに新しい下着と靴下、そしてセーターやズボンが手渡された。
新しい服などこの時しか買ってもらえなかったので本当にピカピカと光って見えた。
家にはテレビなどなかったので紅白歌合戦も見ることはなかったが、
大晦日だけは夜遅くまで起きていても叱られなかった。

片付けも一段落すると父は晩酌を始める。
末っ子の僕はあぐらをかいた父の膝の中にすっぽり入り、父の酒の肴を時々口に入れてもらった。

そしていよいよ十二時を過ぎて、新年。
家族全員が父の前に正座をして「あけましておめでとうございます」。
これがわが家の儀式。
父はニコニコしながら「おい、お年玉」と言って、それぞれにぽち袋を手渡してくれる。
ささやかな金額ではあったが、父と母が晴れ晴れとして手渡してくれた、このお年玉。
今でも忘れることができない。







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