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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

新しい家族へ

第2話前編
更新日:2009.7.17
第2話「憤る」(前編)

この6月から改正薬事法が全面施行された。薬局薬店・ドラッグストアにおいてはOTC医薬品を
めぐり、必要な情報提供の義務が課せられ、売場もリスク分類に応じた区分陳列へと一新された。
「目覚めよ!薬局・薬剤師」のメッセージを携え、既成概念にない新たな薬剤師の役割について
考察していきます。

それより何より、ホームセンターやコンビニなど医薬品販売に参入してきた異業種との差異化を、
いかなる領域で打ち出すかが焦眉の課題となっている。

「目覚めよ! 薬局・薬剤師」のメッセージを携え、本誌に“殴りこんできた” ハンディネットワーク
インターナショナル(HNI=http://www.hni.co.jp/)の春山 満代表は、全国津々浦々にある薬局が
すでに持つ社会的資源と専門性に着目。21年間にわたる欧米検証から得た経験と冷徹な観察眼 で、医療と介護領域の制度改革を直言してきた。「薬局を核にした地域ゾーンの開発」を提唱する
一方、深刻な人手不足だけが問題視され、サービスの質と教育の重要性を忘れている介護界と、
潜在能力を秘めながら生かしきれていない薬局を結び、老いを支える「終(つい)の棲家」について
独自の回答を打ち出す。この連載から春山代表の真意を読み取ってほしい。 (編集部)


◆病院で「暮らす」場所ではない◆

介護保険や医療法の改定はまさに「木を見て森を見ず」。たとえば、療養型病床群が次々に閉鎖
され、そこに暮らす高齢者は行き場をなくすという。みなし介護老人保健施設を受け皿にして救済を
かけているが、そもそも病院は「暮らす」場所なのだろうか。

いつから全国の中小病院は治療して退院させる所から、多くの高齢者が暮らす場所へと「森」の
かたちを変化させたのだろう。

当時の老人医療費は無料だったから、患者・家族にとってほとんど負担がなかった。おまけに最期 まで過ごせるのだから顧客がサービスを価値と価格で選択する感覚など毛頭育たない。 

それをいいことに「ベッドが埋まらない」という提供する側の一方的なニーズ喚起で医療費は膨張
していった。私にとってビジネスの原点は、いつもこうした歪な成長に対する「憤り」からスタートしている。

10数年前の全日本病院協会(全日病)全国大会でのこと。当時、私は「療養型病床群はやがて淘汰 される」「医療はサービスと認識すべき」「お客さまに選ばれない病院は潰れる」といったメッセージを 発し続け、異端児扱いされていた。

そんな私の主張を全日病が聞きたいと特別講演の依頼があり「時代は動いてきたな」とほくそ笑ん だ。会場には、病院経営者である理事長と専務理事の肩書きを持つ理事長夫人が列席していた。 多くの長期入院の高齢者は、病院を最期の生活の場として過ごし、人生を終える。

特別講演の会場で「あなた方は、人生の最期を自分の病院で迎えたいですか」と尋ねたところ、
シーンと静まり返って誰も手を挙げない。そこに日本の医療の本質を見たような気がした。
常識の裏に隠されている非常識、守られ過ぎた環境で歪に成長してきた日本の医療に、
私は憤ってきた。

(後編につづく)(次回7月24日更新予定)





※このコラムは「DRUG magazin」2009年6月号に掲載された連載を再掲載したものです。





闇に活路あり