第5話後編
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更新日:2009.10.16
第5話「住まう」後編
◆日本を変える「壮年ジプシー」◆ このプロジェクトを通じて、ハワイでしばらく過ごし、そして日本へ戻り、 やがてハワイへ旅立ち、またこの国日本へ戻る。いわば「壮年ジプシー」の勧めである。それによって、この国の素晴らしさと出鱈目さを再認識する。 こうした新しい視点が、日本を変えていくだろう。
ハワイを通じてアメリカの医療・介護制度の実状を知った時、「なんて厳しい自己責任の国なんだろう」と気づく。いまだに医療無保険者が5,000万人
以上も現存する世界一豊かな自由な国。自ら守れない者には最低限の薬剤も医療も提供されず、自ら守る者には信じられないほどバラエティ豊かな医療、
介護、生活サービスが提供される国。
これをアメリカ人は「差別」とは呼ばない。自己責任に基づく、自己選択の健全な「区別」と呼ぶ。
やがてハワイからアメリカを体感することによって、つくづくと北西ヨーロッパの社会民主主義による医療・介護制度が羨ましく思えてくる。
たとえば、スウェーデンやフィンランドやデンマーク。多くの読者諸兄がご承知のように、彼らは生涯、医療・介護、命の看取りまでの社会福祉サービス
を、ほとんど無料で提供する「大輪の花」を咲かせた。 これを私たち日本人は、ただ溜め息と羨望の眼差しで眺める。ここに誤解と間違いがある。デンマークの大輪の花は、花だけでは決して咲かない。 そこに「太い茎」と「しっかりした根」が存在してはじめて花は咲く。 ◆検討すべき医療・介護分野を支える外国人労働層の導入◆
根は血の出るような税金を吸い上げて養分とする。スウェーデンやデンマークの所得に対する税の割合は70〜80%。
100万円稼いでも手元にはわずかしか残らない。この血の出るような税を吸い上げる太い茎とは何か。それは廉価な労働力の充実。
すなわち、外国人の健全な流入、移民政策である。
イギリスもフランスも、そしてオーストラリアも、もちろんアメリカも、健全な廉価な外国人の労働層の流入、移民によって医療・介護のコストは調整されている。
血の出るような税金を吸い続け、厳しいまでの自己責任で金を集め続け、そして健全な医療・介護サービスを模索する高齢先進国欧米。
しかし、そこに共通しているのは、廉価な外国人労働者の活躍。いま日本は、ここに気が付かなければならない。
日本を鎖国から開国しなければならない。
廉価な医療・介護のプロフェッショナルを海外から招き、総枠のコストを保ちながら労働層を充実させる。これが何より大切なことは自明の理。
しかし、事はそう簡単には進まない。最大の壁は医師会・看護師会などの業界団体である。「質が乱れる」「安全が確保できない」などと詭弁を弄するが、
その実は相対的な人件費コストの引き下げを恐れてのことだが、果たしてそうだろうか?
医療・介護の現場における管理者や上級・中級職は日本人が担い、大量に必要な一般・普通・補助職の一部を外国人労働者で形成する。いわば労働層の「2階建てバス」。
この導入を恐れては、この国の医療・介護はコストバランスの中で健全に発展しない。 ◆薬剤を触媒に終焉に関与を◆
初期の要介護から命の看取り、そして終の棲家としての暮らしの充実まで。そこに薬剤は100%リンクする。
高齢者を車で喩えるなら、山あり谷ありの人生を走り抜いてきた、いわば「中古車」。
たとえきれいに整備していても、電気系統や足回りやエンジンにトラブルがある。それをやりくりしながら穏やかな暮らしを演出する上で、
薬は欠かすことができない。
薬を提供しながら、それぞれの経済状況や人生に応じた在宅での療養から終の棲家までの提供。このキーになるのが、全国25万3,000人の薬剤師と、
7万6,000店の薬局薬店・DgS。ニーズの裏にあるウォンツに気づき、不安の裏にある満足の希求へ向け、薬を触媒として情報提供する。
それを担う薬剤師こそが価値を持つ。アジャスト(組み合わせ)された情報が付加価値を持つ。
エーキャット(ACAT=エイジド・ケア・アジャスタブル・チーム)の可能性に、今、気づかなければ。今、変わらなければ。
※このコラムは「DRUG magazin」2009年9月号に掲載された連載を再掲載したものです。
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