更新日:2008.9.17
第18話「目の輝きは取り戻せる」(後編)
マウイではコテージを借り、それぞれがゴルフ、スキューバダイビングと、
各々の時間と空間を楽しみました。
約束事といえば、夕食はみんなそろって楽しもうということだけです。
私はというと、朝ゆっくり起きて、遅い朝食を女房とテラスデッキでとり、
ああでもない、こうでもないとしゃべりながら、日がな本を読むことです。
大自然の中で「何もしない贅沢」を味わう。これが格別なのです。
夕暮れに海岸沿いのレストランへ行ったときです。
スタッフと待ち合わせた時間まで少しあるので、
近くの居酒屋で女房とビールを飲んでいると、
アメリカ人の女性グループに出会いました。
一人は車椅子、もう一人は杖をついて、
そしてもう一人の真っ赤なタンクトップを着た80歳くらいの女性が目に付きました。
脳梗塞の後遺症でしょうか。左半身が完全に麻痺し、足には装身具もつけていました。
でも、髪の毛を美しく束ね、口にはしっかり紅をひき、
マウイ島の大自然を全身で楽しむように、
真っ赤なタンクトップから肌をさらしていました。
その肌にはたくさんのシミがありましたが、
シミより私の目に焼き付いたものは、この人の目の輝きでした。
生きているんです。輝いているんです。
忍び寄る老いを、沈みゆく人生の夕日を知るが故の輝きを、
私は忘れることができません。
この目をなんとか多くの日本の高齢者に取り戻してもらうため、
第3の人生を逆指名できる仕掛けや町作りをしたい――
リタイアメントコミュニティへの確信をもったときでした。
(次回につづく)
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