更新日:2007.5.23
第一章 僕がみた世界のGoodTime 其の二
■ 寝たきりにさせないシステム
僕はイギリスの民営施設のひとつであるマナーコートナーシングホームでとても印象に残る介護の実態に出会いました。もっとも感銘を受けたのは、重度の要介護や痴呆のお年寄りを、「決して寝たきりにさせない」というシステムでした。
施設内を案内されたとき、共有のリビングを見て驚きました。日本だったらベッドで寝たきりであろうと思われるお年寄りたちが、ちゃんとソファに座っているのです。ベッドに寝てばかりでは関節が硬直して動かなくなったり、床ずれが出来やすくなります。ソファに座るようにして、適度な運動と気分転換によって一日のリズムをつくるのです。
もともとヨーロッパやアメリカには、日本で言う「寝たきり」という言葉はありません。日本は畳文化です。畳では起き上がるのも起こしてあげるのも大変なので寝かせきりになりますが、ベッドは腰掛けると車椅子に移動しやすく寝たきりをつくりにくい。こうしたベッドと畳の文化の違いというものが、「寝たきり文化」の違いとなって現れているような気がします。
身だしなみも違います。日本ではだいたいパジャマ兼用のようなだらしない格好で一日を過ごしますが、マナーコートのお年寄りたちは必ずパジャマから洋服に着替え、靴を履き、髪の毛を整えます。これもやっぱり「靴文化」がその根底にあるのかもしれません。
僕はここに、大きな価値観の違いを感じます。どちらが良い悪いという問題ではありません。でも人間の尊厳についての考え方、介護への取り組み方という視点から見ると、欧米のほうが、より深く考えているという気がしてならないのです。
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