更新日:2011.10.7
第四章 在宅ホスピスの真実 其の三
■ きわめて人間的なシステム
この非常にドライでドラスティックな制度のように見える在宅ホスピスのシステムです
が、じつはきわめて人間的に、最期の儀式をマネージメントしています。
なぜかというと、たとえば日本では到底考えられない部分まで、予算で認められているのです。
チャプリンはいいました。
「わたしは医療的な加護はいっさい行いません。スピリチュアル、精霊的加護を行います。
あの世へ行ける心の準備と、リラクゼーションを提供しています」
彼はスピリチュアル、精霊的な治療を行うとはっきりといいました。
さらにソーシャルワーカーが、こう続けました。
「わたしたちがチャプリンと組んでする一番大事な仕事は、亡くなった後の悲嘆管理にあるのです」 たとえば旦那さんが癌で亡くなります。すると奥さんがガクッときます。この後できちんと支えてやらないと、奥さんもスッと落ちてしまうケースがあるというのです。
その奥さんを精神的に支える6ヶ月間の悲嘆管理が、ホスピスサービスとして認められているのです。癌の末期になった人々を支えるサービスと同様に、悲しみや絶望のどん底に落ちて、無気力感にさいなまれている人々の悲嘆管理をする、そのサービスもやはり保険で認められているのです。
ぼくはここに、アメリカの厳しさと、アメリカのホスピタリティというものを見たような気がしました。
非常にドラスティックな割り切りの一方で選択しているものがある。
ここには、本来ならば慈善事業であったはずのホスピスを、貪欲にビジネスにしている
アメリカの強さやしたたかさがあります。
でもそこには、本当に必要なサービスを供給し本当に喜ばれるという、ビジネスの本質もあるような気もします。ぼくはこの在宅ホスピスの新しいシステムに、アメリカの奥深さを見たような気がしました。
※ 次回更新日 : 2011.10.21 (金)
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