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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

僕がみた世界のGood Time

第六章其の一
更新日:2012.1.18
第六章 ヨーロッパの光と影 其の一

 
T 転換期を迎える「ゆりかごから墓場まで」

資産があればまずそれで負担してもらう。
それがなくなったらはじめて福祉の対象となる。
これはもう税率が高いイギリスでさえそうなのだ。

■ イギリスの所得税は40%

ヨーロッパの高齢者医療と福祉は、すべてが自己責任のアメリカとちがって、国民の重い税負担に支えられています。一言でいえば「高負担・高福祉」。日本では考えられないような税額の徴収によって、全体救済をかけるという制度になっています。

たとえばイギリスの場合、基本的な税金は累進課税による所得税と、17.5%という高い消費税から成り立っています。日本と違って最高税率の対象額が低く、日本円で年収が400万円以上あると、最高税率の40%が適用されてしまいます。

この高額な納税義務が、「ゆりかごから墓場まで」といわれるイギリスの医療福祉を支えているのです。

「ゆりかごから墓場まで」という政策は、そもそも1948年に制定された「プア・アクト」という生活保護法に基づいてスタートしました。イギリスに生まれたら、医療と福祉は墓場まで保障するという素晴らしい制度なのですが、半世紀の間には何度かの大きな揺れがありました。

 1980年代にはナーシングホームが増え過ぎて、国家財政を圧迫し、時のサッチャー首相は「レジスタード・ホーム・アクト」という法律を制定して、ナーシングホームを登録制にしました。粗悪なホームを営業停止にさせるのが目的で、施設福祉予算も50%カットされました。

 その後、カットされた予算の一部が在宅介護に向けられたこともあって、イギリスの福祉の振り子は大きく在宅介護へと振れます。ところが1993年には、再び新しい法律ができて、在宅ケアの上限設定が定められました。在宅介護は人件費が意外とかかることに気がついたのです。これによって施設による介護が再び見直されてきました。

 そしていま、国民が等しく福祉を支え、恩恵を受ける社会を理想としてきたこの国に、新しい動きが始まっているという話を聞きました。「ゆりかごから墓場まで」のイギリスが、アメリカ型のシステムを導入し始めたというのです。

 ぼくはその実態を視察するために、さっそくイギリスに飛びました。

  ※ 次回更新日 : 2012.2.21 (水)


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