更新日:2012.4.18
第六章 ヨーロッパの光と影 其の四
T 転換期を迎える「ゆりかごから墓場まで」
■ シェルタード・ハウスのシステム 下
これはまったくアメリカの制度と似ています。資産があるうちは、自己負担でやってもらうという姿勢です。
「あなたの総資産をチェックして、あなたがスッテンテンになったと証明されたとき、はじめて国の保障に入りましょう」
といっているのです。
イギリスではいまこんなふうに、「ゆりかごから墓場まで」という基礎救済のお金の流れ方が、次第にアメリカ型に変わろうとしています。
日本のように、金持ちも貧乏人もすべての人が600円の定食を保障されているという制度ではありません。お金を持っているなら600円払ってください。だんだんなくなってきたら300円でいいです。全部なくなったら全額政府で面倒みましょう。でもそれまでは、資産に応じて負担分を決めましょうね、という制度なのです。
政府の丸抱えでなく、資産があればまずそれで負担してもらう。それがなくなったらはじめて福祉の対象となる。これはもう税率が高いイギリスでさえそうなのです。日本にとってこのやり方はぜひ学ばなければならないポイントだと思います。このシェルタード・ハウス、介護が出前される(介護スタッフが常駐しない)住宅として、非常に発展してきました。いま全英で約35万戸を超えているといいます。しかし今後その数は減っていくだろうと予測されています。
というのも、年々重度の介護が必要なお年寄りが増えてきて、より手厚い介護サービスが受けられるベリー・シェルタード・ハウスへの移行が検討されているからです。
設立から30年、イギリスの公立の高齢者住宅はいま、当初の予想をはるかに越えた高齢者社会の訪れとともに、大きな転換期をむかえているのです。
(次回につづく)
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