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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

僕がみた世界のGood Time

第六章其の十三

更新日:2013.1.23
第六章 ヨーロッパの光と影 其の十三

 
V フランスで見た老いの覚悟

■ 命を見切る覚悟 下

 ホテリア・パリメール・アレシア。入居の費用は決して安くはありません。それでもパリの15区という、きわめて都会的な環境の中で、中流より上の人々に、本当に愛されている感じが伝わってきました。この施設は、いうなれば一種の試金石のようなものです。
「あなたは自分の老いを支えるために何をやってきましたか?」と、問いかけているようなものです。
「公立の施設に行く費用に、あと30%から50%のお金をプラスすれば、こういう民間の施設に入れます。お金はいただきますが、それなりのサ−ビスはいたします。さてあなたは公立の施設とホテリア・パリメール、どちらを選びますか?」――と。

 ぼくはその女性マネージャーに訊きました。「儲かってますか?」と。すると彼女は笑顔で「ウイ!」と答えてくれました。儲けてますよ!その笑顔がさわやかでカッコいいのです。そして彼女はこう付け加えました。「ただしうまく管理するには、マネージャーの能力が非常に重要なんですよ」。

 ぼくは日本でも早くこういうプロフェッショナルなマネージャーが増えて、切磋琢磨しながら日本の老いを支える時代が来てほしい、と思わず願ったほどです。彼女には個人的な老後のビジョンについても訊ねてみました。
「わたしはコートダジュールにアパートを持っているので、夏はそちらで過ごし、冬はパリに戻ってくる生活を考えています。冬場のコートダジュールはつまらないですから。パリにいるときは、芝居や展覧会に行きたいと思っています。わたしには娘が2人いるのですが、娘には迷惑をかけたくないと思っているので、介護が必要になったらここのような施設に入るつもりです」

 そこでぼくはさらに問いかけてみました。もし介護の依存度が高くなったら家で死にたいですか、それともここで死にたいですか?彼女は一瞬躊躇したあと、こう答えてくれました。
「少なくとも独りでは死にたくないですね。老人にとって孤独はつらいものです。娘が看取ってくれないならば、やはりこういう施設を選ぶでしょう」
彼女は自分の老いに対するビジョンをここまではっきりと持っていました。同じような質問を日本の50歳、60歳の方々にしたとき、はたしてこれだけ明快なビジョンが返ってくるでしょうか?


(次回につづく)


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