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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

僕がみた世界のGood Time

第六章其の十五

更新日:2013.3.21
第六章 ヨーロッパの光と影 其の十五

 
W ドイツとデンマークにみる老いの逆指名

■ ドイツの介護保険 下

 日本でもこのシステムを研究したはずですが、最終的には受け入れられませんでした。なぜなら病院側と福祉事業団が猛反対したからです。彼らは、そんなシステムが実現したらお金が家族の方へ流れて、自分たちの仕事がなくなってしまうと思ったからです。

 ドイツでは介護保険がスタートする前、お金を受け取る家族はフィフティ・フィフティだろうと踏んでいました。ところが制度がスタートして1年目、その予想は大きく裏切られました。現金を選ぶ人8割、サービスを選ぶ人2割だったのです。(その意味では、猛反対した人たちの意見は正しかったともいえます。)またドイツでは、在宅で介護を行っている場合、年間4週間の介護休暇を家族に与えるというシステムがあります。その間、家族を介護から解放し、サービス業者に委託する介護費用を国が肩代わりするのです。

 ドイツにあって日本に欠けているのは、まさに介護をする家族のケアという視点ではないでしょうか。介護でボロボロになる家族をいかにして救済するか。ドイツではその問題に早くから注目し、その解決策を具体的に試みているのです。
日本の介護保険はまだまだ未熟です。それでもぼくは、何度も繰り返しますが、まずはスタートしたことに大きな意義があると考えています。

 介護保険という制度が素晴らしいのではなくて、いままでブラックボックスに隠されていた医療・福祉のコストが白日の下にさらされたこと、そして介護サービスの業界に市場原理が導入されたことを評価するからです。もちろん介護を受けるぼくたち自身が「主役」なんだという意識をしっかり持たなければなりません。介護保険とはドイツの例を見る間でもなく、本来きわめて自己選択性の強いシステムなのです。そしてこれから日本の介護保険は、その自己選択という視点から、ますます大きく揺れていくだろうと思います。


(次回につづく)



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