更新日:2013.3.6.
第十一章 「限りある命を生きる」 其の二
■ 「外に出るのが怖い 上」
講演のあと、三〇分ほど質問の時間が設けられていた。事前に、ある先生から、子どもたちから質問が出たら、答えてあげてほしいと言われていた。
「まあ、これまでもそうですが、誰も質問しないんですよ。だから講演が終われば春山さんには、先生方との懇親会のほうに……」
先生の一人はそう言ったが、講演が終わると、最前列のストレッチャーに乗った少年が手を挙げた。
「春山さん、ボク、表に出たいんですけど、怖いんです。ボクたちのこと変な目で見る人もいるし、この前は障害者がひったくりに遭ってカバンを取られたというニュースもありました。ほんとにそんなことあるんですか。世の中ってそんなに怖いとこなんですか」
私はこの少年の言葉に、一瞬、胸が詰まった。日頃から講演後の質疑応答には慣れているはずの私が、一〇秒ほども言葉が出なかった。少年の言葉が真っ直ぐに胸に突き刺さり、その痛みに絶句したのだ。
それでも答えねばならなかった。
(次回につづく)
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