更新日:2013.5.1.
第十一章 「限りある命を生きる」 其の四
■ 「外に出るのが怖い 下」
それまでの人生を振り返ってみると、私だって善意の人ばかりに出会ってきたわけではない。病気を隠していたせいもあったろうが、私の病気を本気で心配してくれたのは、由子と家族、そしてわずかな友人だけだった。
私自身、一時期は少年のように世の中に恐れを抱いて暮らしていた。負けず嫌いで、見栄や羞恥心は人一倍ある。そのことで反感を買い、反感を買ったと思った相手には心を閉ざした。閉ざした心で世の中を見れば、すべてが悪意に満ちているように感じることさえある。
私は話を続けていた。
「もし私が元気な体で、街の中で君と出会ったら、きっとジッと見てしまうと思うよ。だって、君は普通の人と違うもの。でも、しばらく見てたら飽きてしまう。世の中には自分と違って体の不自由な人もいるんだなあと、ただそれだけや。それはけっして差別の目ではないよ。
本当に恥ずかしいのは見られることじゃなくて、見られて恥ずかしいと思う心のほうじゃないのかなぁ」
(次回につづく)
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