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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜 



第十一章其の十




更新日:2013.11.6.
第十一章 「限りある命を生きる」 其の十


■ 「延命治療は行なわない」

 私は、デンマークのいたるところにある「プライエム」と呼ばれる日本でいう特別養護老人ホームを訪ねた。
まず驚かされたのは、プライエムに入所するまでの期間だった。日本の特別養護老人ホームはどこも満員状態で、東京では三年半、大阪では四年半も待たなければ入所できないといわれる。ところがデンマークでは、どんなに長くても六週間も待っていれば入所できるという。もちろん、デンマークのプライエムも満員なのに。

 私は、あることに気づいた。そんなに早く入所できるということは、つまり六週間のうちに誰かが必ず死ぬということではないのか。
プライエムの担当者に、老人たちの平均入所日数を尋ねてみた。するとその答えは、なんと半年から一年半、どんなに長くても二年を超える人はまずいないという。ここだけが特別かと聞くと、「これはデンマーク全体の平均数値だ」という。

 日本の場合はどうだろう。五年、七年なんて当たり前。私の知るかぎり、最も長く入所している例で三三年という人もいるほどだ。
この違いはなんだと、私は頭を捻ってしまった。答えは意外なところにあった。デンマーク人と日本人では、老いを迎えたときの死に対する考え方がまったく違うのだ。プライエムでは末期医療をいっさい行なわない。もちろん、日常の生活の中で風邪をひけば風邪薬を処方するし、お腹をこわせば胃腸薬を出すが、すでに燃え尽きようとしている命を無理に引き延ばすような延命治療や点滴漬けは行なわないのである。

 私は日本の老人医療の現状と比べてみた。老人医療費は年間十一兆円と言われているが、なんとこの三分の一が、死の二週間前から死ぬ間際までに使われる医療費だという。患者は、いよいよとなると高濃度の栄養剤の点滴やカンフルを打たれ、心臓が停止しても、なお心臓マッサージをされる。この心臓マッサージにかかる費用は、一回につき三万五千円。こうして老人医療費が嵩んでいくわけである。


(次回につづく)





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