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第二章 なぜ取り出し口が下にあるのか

従来の自動販売機で商品の取り出し口が下部についているのはなぜでしょう。
それは、もともと利用者側の利益ではなく、供給するメーカーの都合で作られた構造だからです。
機械に商品を入れるなら、一番下まで詰め込むのがもっとも多く入る。
一度にたくさん詰め込めば補充の回数が少なくてすみ、補充するために必要となる人件費も削減できるという算段。ですが、それは車椅子を利用している人だけではなく、その他多くの人にとって不便なものでした。

例えば、妊婦が大きくなったお腹をかがめて商品を取り出すのはひと苦労です。
ミニスカートの女性にしてもかがむときに後ろが気になるからイヤなものでしょう。
虚弱なご老人、松葉杖のスポーツ少年……。
本当に多くの人が供給の都合で作られた自動販売機には不便さを感じていたはずです。
にもかかわらず、誰もそれを改善しようとしなかったのは、長年あたり前のように使われてきていたため、疑問を持つことすらしなかっただけなのです。

車椅子対応の自動販売機の開発に納得がいかない様子の開発キーマンも、このような供給側の論理に対して疑問を抱かない一人。
そして、春山はなぜそれが必要なのかを説明しました。
「車椅子対応の自動販売機は、車椅子の人々にジュースやオロナミンCを買ってもらうためのものではありません。車椅子を必要とする人が多くなり、車椅子に乗っている人を無視できなくなっている今の社会情勢に訴えかけるためのものなんです。
それは確かに直接的に売り上げに大きく貢献するような、いわゆる褒められる商品ではないかもしれません。しかし、誰も断れない戦略的商品なんですよ」

最終的に春山は彼の説得に成功し、ようやく開発に着手することができたのです。

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