ハンディネットワーク インターナショナル(HNI)の大将である私は首から下はまったく働かない。寝るとき以外は車イスに座ったまま。いわば寝たきり中年の見本。ここが健康な生意気大将と違う。しかし、首から上は働くから、人並みに考えることができる。人並み以上にしゃべることも大いにできる。暴言すれすれのアジテーターにもなり、ボディーブローを打たれたら回し蹴りもかます。
世には、五体満足で首から下はピンピンなのに、頭のいかれたご同輩も大勢いる。そう考えると人生五分五分、そう捨てたものではない。紀元前4世紀ころ、中国に膝から下を刑で切り落とされ、歩けない、走れない、動けないハンディを部下たちに代わってもらいながら名をあげた優秀な軍師がいた。名を孫ピン(そんぴん)といった。孫子の兵法を記した孫武の孫とも言われ、またの名を「いざり将軍」。
現代版「いざり将軍」と大いに自負する私が統括するHNIの活躍の場は、医療福祉ビジネス。取り組み始めて15年になる。
この世界は、眠れる巨象と言われてきた。ある人は鼻をさわってホースだという。足に触れて大樹のようだという。毛をさわって針金のようにざらざらしているという。さわる人によって違うことをいう未開の荒野だ。
だからこそ面白い。
その未開のマーケットの導き手として、現代版「いざり将軍」の率いるわが社は、バブル経済のはじけたここ数年、毎年30%以上の成長を続け、現在売り上げ12億円に達するようになった。しかし、会社を大きくすることは決して私の願いではない。潜在的にこれほど多くの人々が「ものとサービス」を望みながら、いまだそれが満足に提供されていないこの矛盾した時代とマーケットのゆがんだ構造に一石を投じることが面白くて面白くて仕方がないのである。
21世紀最大の成長産業として今は誰も疑わない医療介護ビジネス。一方で過剰な注目の中で亀裂を迎えた現在。いよいよあの巨象たちが動き始めた。その競争下で生まれるサービスの質が、消費者にとって満足のいくサービスになるようにと、命を削ってビジネスというゲームを満喫していきたいとHNIは願う。
頼まれても奉仕、無料は原則お断り。ビジネスも、年間100回を超える講演もボランティアでは行わない。ボランティアプロジェクトで大成した事例なし。適正な講演料、業務委託費をいただく以上は、相手もその10倍のメリットを勝ち取ろう、と気合いを入れる。真剣勝負の緊張感が、この新しい医療福祉ビジネスを健全に成長させる一番の要因なのである。
一方、わが社が世に送り出す商品とサービスは、価値も価格も高いものばかりだ、と不思議がられる。それには理由がある。価格破壊のこの時代だが、逆に今こそターゲットを絞ったマーケティングをして、高付加価値、高価格商品を提供する提案型の企業が求められている。それが健全に成り立っていくことが、日本の超高齢化にふさわしいインフラ、社会基盤になると確信するからだ。