私は、これまでの自らの経験や数多くの介護の現状を見る中で、ずっと一つのことが不思議に思えるようになってきました。それは、この国で年老い、やがて介護が必要になると、なぜみんな同じメニューで、選択肢すらないのかというあたり前の疑問です。この日本という国は、仮にも自由主義であり、資本主義であり、決して全体主義国家ではないはずです。それぞれの人生を、それぞれの責任と負担と選択で彩ってきたのに、なぜ年老いて介護が必要になったら、どうして一元化した医療と福祉というメニューしかないのでしょうか。将来を考えて一生懸命働いて蓄えてきた人が、人生の最期に自分が受ける介護の選択をできないというのは、どう考えてもおかしいと思います。

なぜ、この国の介護は、平等という不平等に支配されるのか。福祉施策として、最低限の保障をするのは当然ですが、もう少しその人の経済状態などに応じて、壮年期からの人生や介護のされ方に、いろんな選択肢があってもいいはずです。個人の努力と生活レベルにあわせて、質の良いサービスが提供されるべきです。
いま「望まれていながら提供されていない」新しい介護サービスの産業が必要です。病院大淘汰時代のキーワードに隠された、地域に逆指名される「ナンバーワン」そして「オンリーワン」へ。健全な野心を持った本物のビジネスリーダーが、超高齢日本の勝ち組となるのです。

HNI 代表取締役　春山 満