新たな人材確保として注目される 介護分野の「特定技能」について Vol.6
新しい在留資格「特定技能」で就労する外国人は、業務に必要な技能と日本語の能力を有していることがビザ発行の条件になります。その評価となるのが、分野ごとに実施される「技能評価試験」と全分野で実施される「日本語の試験」です。介護分野で仕事をするには、これに加えて「介護日本語評価試験」の合格も必須に。今回は、特定技能の外国人材が介護施設で働くための試験の概要を紹介し、主に「日本語の試験」について取り上げます。「技能評価試験」と「介護日本語評価試験」は次回取り上げます。
<目 次>
目次
特定技能「介護」で働くには?
2019年4月からスタートした新しい在留資格「特定技能」。働き手不足が解消されない日本において、海外からの労働者を受け入れるのが大きな狙いです。
日本で就労するための新しい在留資格であり、ビザの種類は「特定技能」となります。特定技能の外国人を雇用できる分野を特定産業分野といい、14業種が指定されています。「介護」は特定産業分野のひとつです。また、特定技能には「1号」と「2号」がありますが、介護は「1号」のみとなります。
「特定技能」で就労を希望する外国人は、各分野において実施される「特定技能評価試験」と「日本語の試験」を受験して、合格する必要があります。
特定技能「介護」の場合は、全分野共通の日本語の試験に加えて、介護の現場で必要となる用語などの理解度をはかる「介護日本語評価試験」の合格が必須となります。
これらをクリアしてはじめて、介護施設(受入れ機関)と契約することができ、ビザの申請をし、特定技能ビザを取得することができるのです。
特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針の概要では、以下のようにまとめられています。
[求められる人材に関する事項]
(「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針の概要」より)
介護施設で働くための「特定技能評価試験」とは?
特定技能評価試験は、14ある分野ごとに実施される、その分野の技能レベルをはかる試験です。
各分野の業界団体が国に求める基準をもとに試験を行っていて、試験の内容は、技能水準と日本語能力水準の試験を作成して実施されています。
各分野の「特定技能」において新設する試験については、以下のように示されています。
「特定技能」において新設する試験について
(法務省 ホームページより)
介護の特定技能評価試験の日程
介護の技能を評価する「介護技能評価試験」は、2019年4月にフィリピンのマニラで最初の試験が実施されました。その後、フィリピン国内ではセブやダバオなどにも実施場所が拡大。また、9月にはカンボジア、10月にはネパール、インドネシア、日本でも試験が実施されました。さらに、11月にはモンゴルでの実施が予定されています。
2020年1月以降には、ベトナムとミャンマーでも試験が予定されていて、日本の介護業界で働きたい人材への受験機会が拡大しています。
特定技能「介護」に必要な「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」の最新日程は、厚生労働省のホームページで発表されています。
○厚生労働省:介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
*「2.技能試験と日本語試験について」の「(1)受験申込手続のご案内」の「試験日程」を参照。試験日程は随時更新されます。最新情報にアクセスするために、URLを開いた後にページの更新をしましょう。
2019年11月現在、フィリピン、インドネシア、モンゴル、ネパール、カンボジア、日本で実施される試験の情報が掲載されています。
なお、試験の内容については、今後、本サイトで詳しく紹介していく予定です。
日本語能力のレベルをはかる全分野共通の日本語の試験
まず、14分野で共通する「日本語能力水準試験」について説明します。
日本語能力水準試験は、どの程度の日本語ができるのか、そのレベルを調べるための試験です。
特定技能の日本語能力の水準は、「国際交流基金日本語基礎テスト」、または「日本語能力試験」(N4以上)の結果で判定します。
「特定技能」に係る試験の方針については、試験問題の作成等、試験水準、試験科目、試験の実施場所や実施回数、試験結果等の公表等などが定められています。
○法務省:「特定技能」に係る試験の方針について
http://www.moj.go.jp/content/001286159.pdf
「国際交流基金日本語基礎テスト」とは?(全分野共通)
ここでは、全分野に共通する交流基金日本語基礎テストについて紹介します。
●試験の方法
国際交流基金日本語基礎テストは、「相互理解のための日本語」を理念とする日本語教育のための枠組みである「JF日本語教育スタンダード」の考えに基づき、「日本語で何がどれだけできるか」を測ることを目的としています。
このテストでは、主として就労のため日本で生活する日本語を母語としない人が来日後に遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な言語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定します。
●テストの形式
国際交流基金日本語基礎テストの方法は、以下のようになっています。
・コンピュータ・ベースド・テスティング(CBT:Computer Based Testing)方式により行われます。
・各国のテスト会場でコンピュータを使用して出題され、それに解答します。
・ブースで、コンピュータの画面に表示される問題やヘッドフォンに流れる音声をもとに、画面上で解答します。
テストは、指示文は現地語で表示されます。その指示文を読み、状況や場面を把握して問題に解答します。解答の際は、選択肢をクリックします。
●テストの構成
国際交流基金日本語基礎テストは、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションで構成されています。
テストの問題の構成と各問題のねらいは、以下の通りです。 約60問が出題され、受験時間は60分間です。セクションごとの解答時間の制限はありません。
【テストの構成とねらい】
(国際交流基金日本語基礎テスト ホームページより)
●試験の申し込みについて
国際交流基金日本語基礎テストを申し込むには、実施地のテスト会場で、事前にバウチャー券の購入が必要となります。
バウチャー券の購入方法や受験申し込みの手順の詳細は、申し込み専用ウェブサイトがあります。
○試験日程や受験申し込み(国際交流基金日本語基礎テスト)
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/index.html
●テストの結果通知について
国際交流基金日本語基礎テストの結果は、受験者に通知されます。
2019年4月・5月・6月に実施されたテストでは、テスト終了時に画面に判定結果が表示され、受験から2週間後に正式な判定結果通知書(PDF)がメールで送られました。
また、同年8月・9月に実施したテストでは、テスト終了時に画面に判定結果が表示され、受験から2週間後に申込み専用ウェブサイトへログインすることで、正式な判定結果通知書(PDF)をダウンロードできるようになりました。
●テスト結果について
判定結果通知書では、総合得点と、それに基づく判定結果がわかります。
判定結果は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を水準に達しているかどうかを判定します。また、参考情報として、セクションごとの正答率が表示されます。
総合得点は、等化と統計処理によって算出された尺度得点で表示されます。総合得点の得点範囲は10〜250点で、総合得点が判定基準点(200点)以上のとき、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない水準に達している」と判定されます。
日本語の基本となる水準については、「国際交流基金日本語基礎テストに係る試験実施要領」で以下のように示されています。
* * *
「『特定技能』に係る試験の方針について」に定められた、基本となる日本語水準を測る以下の尺度に則り、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度のA2レベル(「学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参考枠」(CEFR)における共通参照レベル)相当の日本語力を持っているかを判定する。
・ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
・簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。
・自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。
(「国際交流基金日本語基礎テストに係る試験実施要領」より)
* * *
●今後の試験について
国際交流基金日本語基礎テストについては、試験の目的や実施日時・実施場所、今後のスケジュールなどが、国際交流基金のホームページに記載されています。
○国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/
○法務省・国際交流基金日本語基礎テストに係る試験実施要領
http://www.moj.go.jp/content/001291461.pdf
「日本語能力試験」とは?(全分野共通)
特定技能の取得を希望する外国人を対象とした全分野共通の日本語能力の試験は、ほかにもう1種類あります。
それは「日本語能力試験」です。
「国際交流基金日本語基礎テスト」か「日本語能力試験」のいずれかに合格すれば、特定技能の日本語能力があるとみなされます。
日本語能力試験は、多くの資格認定にも活用されている、国際的なテストです。例えば、海外で医師免許を持っている人が日本の医師等の国家試験を受験するために日本語能力試験(N1)の認定が必要などとなっています。
特定技能の場合は、この試験で日本語レベルが「N4以上」の認定が必要です。
N4の認定の目安は、以下のようになっています。
[認定の目安]
各レベルの認定の目安を【読む】【聞く】という言語行動で表します。それぞれのレベルには、これらの言語行動を実現するための言語知識が必要です。
【N4の認定の目安】
基本的な日本語を理解することができる
[読む]
基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
[聞く]
日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
(日本語能力試験 ホームページより)
詳しくは「日本語能力試験」のホームページでご確認ください。
試験の日程や受験手続きの流れ、実施国・地域などもホームページに記載されています。また、試験の問題例もあります。
日本語能力試験(日本語能力試験、N1〜N5の目安)
https://www.jlpt.jp/about/index.html
介護施設は就労後も語学習得をサポートする
特定技能の在留資格を取得して日本で就労を希望する外国人は、日本語の試験の受験・合格が必要です。そして、特定技能「介護」の場合は、この日本語の試験に加えて、「介護日本語評価試験」を受験し、合格する必要があります。
日常生活を送る上で必要となる日本語と、業務のために必要な日本語という違いがありますが、どちらも必要なのはいうまでもありません。
とはいえ、この試験勉強をしただけで、何の問題もなく流暢に日本語で会話ができる外国人は、そう多くはないでしょう。特定技能では、日本に入国した外国人材に対して、受入れ機関(介護施設)が生活のための日本語取得の支援をすることが定められています。
外国人介護士が日本で就労した後もこうした支援を続けることは、今回の制度の特徴のひとつです。支援の内容については、あらためて紹介します。
次回は、介護分野で必要となる「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」について取り上げます。