「離職率が高い」と言われることが多い介護業界ですが、実際の離職率や離職理由はどうなっているのでしょうか。この記事では、介護業界の離職率の実態について解説いたします。
介護の離職率の実態
平成28年度「介護労働実態調査」の結果によると、介護の離職率は16.7%となっており、5~6人に1人が職場を離れていっていることが分かります。同調査によると介護関係の仕事を辞めた理由で最も多かったものは「職場の人間関係に問題があったため」で23.9%、次いで「結婚・出産・妊娠・育児のため」が20.5%、「職場の理念や運営のあり方に不満があったため」が18.6%と続き、「収入が少なかったため」は16.5%で6番目となっています。
一方、同調査によると採用率の状況は19.4%と決して高くはなく、さらに不足感を感じている事業所は全体の約60%と過半数を占めており、離職率が高め、かつ採用が困難な状況が職場の人手不足を生んでいると言えます。
離職理由をおおまかに整理すると、「人間関係」の問題と、「運営体制の問題」の2つに分けられます。結婚や出産・育児を理由に仕事を辞めてしまう方が多いというのは一見別の問題にも見えますが、職場が結婚生活や育児を続けながら働ける環境にない、つまり運営体制に少しは問題があるということも考えられます。
介護施設の人間関係についての問題点
人間関係に関する問題点として、以下のようなことが挙げられます。
同じ部署に同じ人員が長くとどまっている
同じ部署に同じ人員がずっといれば、多くの人は自分の所属する部署からの視点しか養うことができず、それは他部署に対して不満を募らせる原因になってしまいます。その結果、派閥やセクショナリズムにつながる可能性もあります。
高圧的な態度をとる人がいる
職場の人間関係の問題として、介護職員と看護師間の仲が悪くなってしまうのは、多くの施設で起こっていることです。そうなってしまう原因として、やはり看護師は医療的な処置に対する指示などを介護職員へ「する側」となるシーンが多いため、態度によっては「高圧的」と捉えられてしまい、人間関係が悪くなりがちです。
コミュニケーションが不足している
介護施設は忙しいため、同僚とじっくり話す時間をとることが難しい場合が多いでしょう。また、「気が合わない」と感じた同僚とは積極的に話そうとしないため、ますますコミュニケーションが不足します。その結果、情報共有や引継ぎがうまくいかないという問題に発展していきます。
介護施設の理念や運営に関する問題点
人間関係だけでなく、介護施設の理念や運営にも問題点として、以下のようなことが挙げられます。
現場の担当者に任せきりになっている
例えば、「人を大切にする」という理念をかかげていたとしても、施設の責任者が実情に無関心で現場の担当者に任せきりにしていると、苦しいときにも上司である責任者に頼れず「どこが人を大切にしているのだ」と不信感を募らせてしまいます。また、その担当者が何らかの理由で職場に出られなくなったときなどには、職員全体へ負担が大きくなってしまい、さらに大きな不満へとつながります。
気遣いができていない
介護施設では忙しいあまり、「ありがとう」や「助かったよ」というお礼やねぎらいの言葉が不足しがちです。このような気遣いがなければ、職場はギスギスします。また、「自分のことを大切にされている」と思うことができず、不満につながります。
キャリアプランを明示できていない
具体的に「この資格を取り何年勤めるとこのくらいの地位・給与になる」という方向性が見えていないことも問題です。自分の将来の見通しが立たないと、不安を感じるものです。特に「収入が少ない」という理由で介護業界を離れてしまう方は、キャリアプランが見えないことに不満を抱いていることでしょう。
原因が分かっても対策の実施は難しい
上記のように、介護施設ではさまざま問題を抱えています。このような問題が要因で離職につながっていきますが、すぐに解決することは難しいでしょう。また、離職者の穴を埋めようと採用しようとしても、すぐに採用できるとは限りません。そのような場合は、「外国人介護士」を活用するなど、さまざまな方法を検討することが大切です。
参考:
介護職員の離職防止に、人間関係を改善する6つの方策|介護経営
平成28年度 介護労働実態調査結果について|公益財団法人介護労働安定センター