「特定技能」外国人介護人材が、日本で働くために必要な条件とは?

新たな人材確保として注目される 介護分野の「特定技能」について  Vol.3 

人材不足が深刻な介護業界において、海外からの人材確保として期待される新しい在留資格「特定技能」。 具体的には、どういう人材が想定されているのでしょうか? また、特定技能の外国人が来日するためには、どのような条件をクリアしなくてはいけないのでしょうか? 今回は、特定技能による外国人雇用の条件について紹介します。

<目 次>

介護特定技能1号の要件            

介護技能評価試験・介護日本語評価試験とは   

介護技能評価試験について           

日本語試験〜介護分野は2つの試験がある    

介護日本語評価試験について          

外国人介護人材の受け入れと「特定技能」への移行

「第2号技能実習」修了からの移行       

「EPA介護福祉士候補者」からの移行     

在留資格「介護」を目指す留学生からの移行   

「特定技能」の最新情報            

介護特定技能1号の要件

日本で労働するための新しい在留資格「特定技能」。外国人がこの資格で就労するには、その分野において技能を有していること、そして日常会話レベルの日本語の能力が必要とされます。日本語の習得レベルについては、日本語能力試験の合格が必須となります。

介護の特定技能1号の資格を取得するには、介護の技能について検定する「介護技能評価試験」を受験し、合格することが必須です。また、日本語の能力については、「日本語能力試験」に加えて、介護業務を行うために必要な「介護日本語評価試験」を受験し、合格することが条件です。

介護技能評価試験・介護日本語評価試験とは

介護分野における技能試験と日本語能力試験、そして介護日本語評価試験の概要については、以下のように発表されています。

【技能試験・日本語試験の概要(介護分野における分野別運用要項)】

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(法務省・社保審一介護給付費分科会 169回 資料 より)

また、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の内容については、以下のように発表されています。

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(厚生労働省 ホームページより)

介護技能評価試験について

介護の特定技能では、介護業務の基盤となる能力や考え方などに基づいて、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベルが求められます。それを「介護技能評価試験」で見極めます。

介護分野における技能試験は、日本ではなく、現地で実施されます。そして、試験言語は日本語ではなく、現地語が用いられます。

試験の実施主体は、厚生労働省が選定した民間事業者が実施し、試験の方法はCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式が採用されています。

実施回数については、国外では年6回程度、国内での実施は検討中です。

2019年4月より介護技能評価試験が開始され、すでにフィリピンで試験が行われています。

●試験の内容

試験の内容については、次のようになっています。

[介護技能評価試験について]
・試験時間:60分
・学科試験:40問
 介護の基本(10問)
 こころとからだのしくみ(6問)
 コミュニケーション技術(4問)
 生活支援技術(20問)
・実技試験:5問
 判断等試験等の形式による実技試験課題を出題
・合格基準:問題の総得点の60%以上

●これまでの試験結果

これまでの試験結果は公表されていて、以下のようになっています。

[介護技能評価試験(フィリピン)]
第1回:受験者数113人、合格者数94人。合格率83.2%
第2回:受験者数336人、合格者数140人。合格率41.7%
第3回・第4回:受験者数196人、合格者数75人、合格率38.3%
2019年7月:受験者数290人、合格者数82人。合格率39.2%

試験の日程については、厚生労働省のホームページで公開されています。

◎厚生労働省:介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

日本語試験〜介護分野は2つの試験がある

日本語の試験は、特定技能の全分野共通の「国際交流基金日本語基礎テスト」(*)と、介護分野に必要な「介護日本語評価試験」の2種類があります。介護の特定技能1号を取得するには、両方の試験に合格する必要があります。 (*)または「日本語能力試験(N4以上)」。

分野に関係なく実施される特定技能の日本語試験では、ある程度の日常会話ができ、生活に支障のない程度の日本語能力が求められます。

これに加えて、介護の日本語(介護日本語評価試験)では、介護現場で業務に従事する上で支障のないレベルの日本語能力が求められます。

*第2号技能実習を修了した人は、技能試験及び日本語試験が免除されます。

全分野共通の日本語試験は、以下の2つのいずれか)に合格することが必要です。

◎国際交流基金日本語基礎テスト
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/

◎日本語能力試験
https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html

介護日本語評価試験について

介護日本語評価試験は、介護に関する用語などについての理解度をはかる試験です。2019年4月より開始され、すでにフィリピンで試験が行われています。

●試験の内容

試験の内容については、次のようになっています。

[介護日本語評価試験について]
・試験時間:30分
・問題数:全15問
 介護のことば(5問)
 介護の会話・声かけ(5問)
 介護の文書(5問)
・合格基準:問題の総得点の60%以上

●これまでの試験結果

これまでの試験結果は公開されていて、以下のようになっています。

[介護日本語評価試験(フィリピン)]
第1回:受験者数113人、合格者数97人。合格率85.8%
第2回:受験者数336人、合格者数121人。合格率36.0%
第3回・第4回:受験者数202人、合格者数49人。合格率24.3%
2019年7月:受験者数200人、合格者数91人。合格率45.5%

試験の日程については、厚生労働省のホームページで公開されています。

◎厚生労働省:介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

外国人介護人材の受け入れと「特定技能」への移行

介護分野で外国人が業務に携わるには、これまで、①在留資格「介護」、②EPA(経済連携協定)、③技能実習という3つの在留資格がありました。これに新たに加わった4つめの在留資格が「特定技能」です。

「特定技能」の新設による法改正によって、これまでの在留資格からの移行もできるようになりました。

外国人介護人材の受け入れの仕組みをまとめると、以下のようになります。

【外国人介護人材受入れの仕組み】

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(厚生労働省 ホームページより)

「第2号技能実習」修了からの移行

「介護特定技能1号」の資格を取得する方法として、介護分野の「第2号技能実習」修了からの移行という方法があります。

介護分野に関しては、技能実習制度が導入されたのが最近のため、すぐに移行する人が現れるというのは、あまり現実的ではないでしょう。

本人が希望することが前提ですが、実際に技能実習から特定技能に移行したとして、介護人材が誕生するのは2年後となります。

「EPA介護福祉士候補者」からの移行

介護特定技能1号の資格を取得する方法として、EPA介護福祉士候補者からの移行という方法もあります。

在留資格「特定技能1号」への移行について、厚生労働省では、以下のように発表しています。

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(厚生労働省 ホームページより)

EPAは介護福祉士候補生として入国、介護施設で働きながら勉強し、介護福祉士国家試験を受けて介護福祉士資格を取得し、その上で在留資格「介護」を目指すという立場でした。そのため、これまで試験に不合格だった場合、帰国しなければなりませんでした。しかし、特定技能へ在留資格を変更すれば、日本に滞在して就労することができるのです。

在留資格「介護」を目指す留学生からの移行

留学生は本来、在留資格「介護」の取得を目指していますが、法改正により介護福祉士養成施設を修了しただけでは、在留資格「介護」を得ることはできなくなりました(2022年度から)。

「特定技能」の最新情報

介護分野における新たな在留資格「特定技能」は、制度が始まったばかりで、浸透には時間がかかるでしょう。しかし、働き手不足が深刻な介護現場では、一刻も早い人材確保が期待されます。

当サイトでは、新しい人材確保の手段として注目される「特定技能」について、今後詳しく解説していきます。

また、厚生労働省のホームページでは、介護分野の「特定技能」について最新情報が更新されています。

厚生労働省:介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)について
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

法務省の「特定技能」に関するホームページでは、「特定技能外国人受入れに関する運用要領」や特定技能外国人に係る在留申請などについて記載しています。

法務省:新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(在留資格「特定技能」の創設等)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00127.html

次回は、介護施設での業務内容や介護報酬上の配置基準算定について取り上げます。