コロナウイルスによる集団感染を防止するため、介護施設の皆様におかれましては奮闘される日々が続き、心身ともに疲労困憊かと存じます。
また、日本社会全体にも本格的なデジタル化という大きな波がやってくるようですね。 テレワークやWEB就活は容易に理解できますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)とはなんぞや? といったところではないでしょうか。
介護の仕事も、この波に乗ってデジタル化やロボットの活用など、生産性の向上を図らなければなりません。しかし、多額の費用が必要であり且つ、扱える人材が法人内に不在とあっては、たとえ導入したとしても宝の持ち腐れ。ましてやデジタルやロボットが食事介助やおむつ交換をしてくれるわけでもなく、まだまだ多くのことを人手に頼らなければならないのが現状です。
コロナ不況は介護職員採用のチャンス?!
コロナ不況やコロナ大恐慌という言葉を聞いて、2008年のリーマンショックを思い出された方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
介護業界における人材採用は他の業界と異なり、不況になると人材を採用しやすくなるという、景気と反比例する特徴があります。2008年に生じたリーマンショックの影響により、日本の景気は2009年の春にどん底まで落ち込みました。その時、職を求めて介護施設に未経験者の応募が殺到しました。
「今回も同じように、介護施設に応募が来るのではないか?」
「最近、求人に対する反応が良いような気がする」
このような考えや感触は、残念ながら全て幻想です。介護施設の求人に応募は
来ません!
なぜなら、リーマンショックの時と根本的な条件が違うからです。
介護職の採用ができない根本的な条件:その①
根本的な条件の1つ目、それは「労働力人口」です。
25歳から44歳までの労働力人口を比較すると、
2009年の2,887万人に対して、2019年は2,579万人、なんと
マイナス310万人!!
参考資料:総務省統計局 労働力調査
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
一時的に応募者数が増えるかもしれませんが、リストラの対象となりやすい、しかも未経験の中高年による応募が多数を占めると予想されます。そうすると、大変なのは介護現場です。ただでさえ未経験なのに、プライドだけは高く、やる気と体力は低い中高年に対して、介護の仕事を教えることは大変です。介護現場が更に疲弊することは、目に見えています。
また、他業界の景気が回復すれば、そのような人材は辞めていくのが目に見えています。
一生懸命に教育したのに、誰も残らない・・・・・
現場には「徒労感」が漂い、残された職員にも先の見えない不安・諦め、そして退職へと、負の連鎖を招くことになります。
介護職の採用ができない根本的な条件:その②
そして、根本的な条件の2つ目、それは「要介護高齢者の増加」です。
何を今更・・・そう思われるかもしれませんが、要介護高齢者が増加するということは、おのずと必要な介護職員数も増加させなければなりません。
リーマンショックがあった2008年から2009年あたりの要介護者数は、約460万人でした。これが2018年では644万人へと、約40%も増加しています。
(2020年3月暫定値では668万人)
これに対して、介護職員数は123万人から183万人へと、50%近く増加しています。
あれ・・・? 介護職員数の増加率の方が高いの?? だったらなぜ、人手が足りないの?
理由は簡単。要介護3以上の、多くの人手を必要とする中~重度な要介護者が増えているから、10%程度の差では、仕事の増加率に追い付かないのです。
参考資料:厚生労働省 介護分野の現状等について
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000489026.pdf
つまり現在(2020年)は、リーマンショックの時よりも労働力人口は大幅に減少したにも関わらず、必要とされる介護職員数は大幅に増加しているのです。
2020年度において、介護の仕事に従事している職員数は、約216万人だと推計されていますので、それを遥かに上回る、310万人という労働力人口が既に消滅しているのです。
このことは有効求人倍率にも明確に表れています。リーマンショックがあった2008年度の介護職員の有効求人倍率は2.20でしたが、翌年には1.33と大きく低下しています。1.0に近づけば求人数と応募数が均衡しますので、かなり均衡に近づいたと言えます。
ところが、2018年度の有効求人倍率は3.95と、リーマンショック前後とは比較にならないぐらい高いのです。不況の影響で多少は介護業界に人材が流れてくるでしょうが、それでは到底追いつかない水準まで、人手不足は深刻なのです。
参考資料:P3
https://jicwels.or.jp/wp-content/uploads/2020/01/.pdf
介護業界の2025年問題は序章にすぎない
ここまでは、介護職員採用の「今」を確認してきました。
しかし、忘れてはいけないのが、介護業界の2025年問題です。高齢化率が30%を超えると予想される時代に、介護職員数の需要見込みは253万人。それに対して供給は215万人が予想され、マイナス38万人という大きなギャップが生じます。東京や大阪では3万人以上が不足すると予想され、人材獲得競争は近隣府県を巻き込み、今以上に激化することが予想されます。
更に、2035年には要介護者数が960万人と予想されています。それに対して、必要な介護職員数が307万人、供給予想が228万人、介護職員数の需給ギャップはマイナス79万人と予想されています。
参考資料:
介護業界の人手不足、2025年は序章?介護現場は2035年破綻の危機を迎える!?【1】
https://www.hni.co.jp/787/
介護業界の人手不足、2025年は序章?介護現場は2035年破綻の危機を迎える!?【2】
https://www.hni.co.jp/790/
これらのことでわかるように、目先の好不況に目を奪われると、将来の採用計画がうまく運ばないことが明白です。まだ5年ある、まだ15年ある、ではないんです!
今、どうするかを考えなければ、5年後、15年後の安定経営はありえません。
とにかく、
コロナ不況には頼れない!
このようにお考え下さい。
まとめ
コロナ不況に頼れない、頼らない採用計画を遂行するためには、今以上に採用ルートの多角化が必要だと思われます。その多角化の中に、「外国人」という視点を入れてみてはどうでしょうか。外国人介護人材の採用は、人材不足を補うための、重要な採用方法となるはずです。なぜなら、リーマンショックから今日までの、310万人に及ぶ労働力人口の減少をカバーしてきたのは、約166万人にまで増加した若い外国人労働者だからです。
参考資料:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55077730R30C20A1EA4000/
厚生労働省でも、「福祉・介護人材の確保に向けた取組について」において、外国人介護人材の受入を明記しています。もはや“外国人はちょっと・・・”などといった古い考えではなく、外国人介護人材の受入は必要不可欠であり、大前提の一つなのです。国は外国人介護人材を含めた総合的な人材確保の対策を推し進めようとしているのです。
この大きな流れを、まだ横で見ているだけで動けない介護施設様が多数あります。
介護業界では人材不足が原因での倒産も増えています。
もはや他人事ではありません。「今」決断しなければ、手遅れになるのです。
当社では外国人介護人材の採用を研究されている方々に向けて、「特定技能」について詳しく解説したコンテンツをご用意いたしています。
既に様々な研究をされている方に向けては、
第一回:「特定技能」は、外国人材採用の主流となる!https://www.hni.co.jp/999/
また、これから制度を研究しようと考えておられる方に向けては、
「特定技能」で介護業界はどう変わる?https://www.hni.co.jp/913/
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