在留資格「特定技能」で外国人介護士を受け入れる場合、外国人介護士に対して様々な支援をするよう、国は法律で求めています。介護施設様によっては、その支援を自法人でおこなう条件が整わず、外部委託が必須となるケースもあります。この場合、支援の委託先となるのが「登録支援機関」と呼ばれる法人(または個人)になります。
登録支援機関は法務省所管の出入国在留管理庁に認められた機関で、特定技能で入国する外国人労働者の支援をおこなうことができます。2020年7月27日現在、この登録支援機関は全国に4,844件もあるため、「どのように選んだらよいか、わからない」というお声を多く耳にします。では、外国人介護士を受入れる介護施設様は、どのように登録支援機関を選んだらよいのでしょうか。
介護の仕事はハイレベル
特定技能という在留資格では、14分野において外国人労働者を受入れることが可能です。介護以外の13の分野とは、
ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船、自動車整備、航空、飲食料品製造、漁業、農業、宿泊、外食業
となっていますが、人間という最も複雑で対応が難しいものを相手にするのは、介護以外では宿泊と外食業だけです。バックヤードでの重要な仕事も多い宿泊や外食業と異なり、介護の仕事は四六時中生身の人間を相手にする仕事です。他の分野のように技術だけあれば仕事が成り立つと楽ですが、介護技術に加えて高いコミュニケーション能力までも要求されます。また、介護の仕事は職場環境も特殊です。他の分野では、日本人の指導者の目が届く範囲で、外国人労働者に働いてもらうことが可能です。しかし、個室化が進む介護施設では、どうしても日本人指導者の目の届かないところで、利用者と外国人介護士が1:1となる、ハラハラ・ドキドキの場面が出てきます。また、24時間365日稼働しており、早出から夜勤まで、勤務形態も複雑です。体力的に厳しいのはもちろんのこと、精神的なストレスも非常に大きいです。外国人介護士はもとより日本人同士であっても人間関係の悪化を招きやすいため、指導者やリーダーには高度なマネジメント能力まで求められています。
選択肢は2つ
このような介護分野において、介護施設様はどのような登録支援機関を選べば良いのでしょうか。登録支援機関を選ぶ基準は2つあると考えています。1つ目は、外国人支援・外国人対応の経験が豊富なところ。そして2つ目は、介護業界に精通しているところです。では、介護施設様はどちらを選べば良いのでしょうか。
この話をする前に、1つ確認しておきたいことがあります。誰しもトラブルは困りますよね。外国人介護士の受け入れを検討されている多くの介護施設様が「トラブルを起こしたくない」と考えておられます。
しかし、断言します! トラブルは必ず発生します。
異文化というのは、何も外国人介護士だけではありません。上に下に年齢が離れれば、日本人でも相互理解の不足からトラブルが発生します。したがって、外国人介護士を受け入れれば、必ず当初はトラブルが発生すると覚悟してください。
つまり、登録支援機関を選ぶ基準は、このトラブルへの対応力の高さを重視するべきなのです。トラブルへの対応力の高さということは、外国人支援・外国人対応の経験が豊富なところと考えがちですが、それは大きな間違いです。介護分野は他の業界と異なり特殊なことが多いです。特に職場でのトラブルについては、業界が異なると他業界の経験が全く役に立ちません。トラブルの原因を推察すらすることが出来ないのです。したがって、介護施設様が選ぶべき登録支援機関は、介護業界に精通しているところであるべきなのです。
最後に
この基準は、当社の経験から申し上げております。是非、当社のコラム:2020年7月27日の、「外国人介護士とのトラブル発生! 特定技能だから解決できるその手法とは?」をご参照いただければ幸いです。https://www.hni.co.jp/1124/
「経験が浅い登録支援機関で大丈夫か?」と思われるかもしれません。しかし、国が定める外国人への支援内容は、そんなに難しいものではありません。難しいのは介護現場の人間関係です。外国人介護士は日本に信頼できる人がいません。そんな外国人介護士の信頼を得て、介護施設様や日本人スタッフとの間に円滑な関係を築けるのは、介護という仕事や職場に精通している登録支援機関以外に考えられないのではないでしょうか。
更に欲張るならば、介護教育や日本語教育まで登録支援機関がサービスを提供できれば、介護施設様にとって力強い味方となるでしょう。介護現場は非常に忙しいので、どうしても近視眼的になりがちです。客観的な観点からのアドバイスを引き出すことが出来れば、施設運営にも役立つでしょう。
「それって、コンサルタントと契約するってこと?」
そう思われたかもしれません。
はい、それぐらいの考えで登録支援機関を探すべきです。外国人介護士を受け入れた場合、日本人同士だから今まで誤魔化せていた様々な課題が、表面化するケースが多いのです。どのような課題が表面化するかは介護施設様により異なります。人事評価かもしれません。日本人同士のコミュニケーションかもしれません。バラバラな介護のやり方かもしれません。せっかく外国人介護士を受け入れるのでしたら、単なる人材不足への対応と考えるのではなく、介護施設の経営改善にまで視野を広げては如何でしょうか。だからこそ、コンサルティングが出来るぐらい介護業界に精通した登録支援機関を選ぶべきなのです。