皆様にご報告です。去る2020年10月22日そして2020年11月1日と連続で、当社が教育をおこないましたインドネシア人材(合計24名)が、特定技能/介護の試験(介護技能評価試験、介護日本語評価試験)に全員無事に合格致しました。
当社は、ベトナム・インドネシアにおいて、特定技能の在留資格で日本に来て働きたいと考えている人材に対して、日本の介護を教育する事業をおこなっています。2019年にはベトナムに、2020年にはインドネシアに、その範囲を広げて参りました。
当初はベトナムの事業が先行していましたが、コロナウイルスの影響によりインドネシア事業が先行することとなりました。インドネシア第三の都市:バンドンにある日本語学校(バハナ)と提携し、バハナの学生に対して介護教育をおこなっています。当社としては初めての受験そして初めての合格者の輩出となります。この合格者輩出までの道のりについて皆様にご報告申し上げます。
トラブル1:時間が足りない!
2020年8月11日より、第1組11名に対する最初の介護教育をスタートすることが決定いたしました。日本語学校(バハナ)に所属する学生は、全員が医療系の大学・短期大学を卒業しています。学校では実習の授業もあるため机上での知識だけでなく、実体験を通して学んでいました。そのような学生に日本の介護をどのように教えるか、迷いながら1ヵ月前より準備を開始いたしました。
介護の特定技能の在留資格で日本に入国するためには、
1、日本語の試験(日本語能力試験:JLPT-N4
または国際交流基金日本語基礎テスト:JFT-Basic)
2、介護の試験(介護技能評価試験および介護日本語評価試験)
この2種類の試験に合格することが必須条件です。
当社では、介護の試験に向けた対策として、出題される問題を非常に高い精度で再現することに成功しています。もちろん、裏ルートや違法な手段で問題を入手したわけではありませんが、血と汗と涙の結晶として3パターンほど試験問題の再現に成功したため、全体の出題傾向が掴めていました。その傾向に基づいて、学生が学習するために十分な問題の質と量を確保した約1,800問に及ぶ問題集を作成しています。その問題集を実施すれば、試験対策だけでなく介護の基本的な知識も十分に理解できる内容となっています。
ところが、ここで1つ目のトラブルが発生します。業務提携が急だったため介護の授業のための準備期間が約1ヵ月しかなく、問題集を日本語からインドネシア語に翻訳する時間が足りないことがわかりました。約1,800問、文字数にして軽く20万文字を超える日本語の問題集を見て、バハナの日本語の先生達は腰を抜かしてしまいました。問題集の翻訳ができなければ、試験の合格は危うい・・・そう考えた私は焦っていましたが、問題集に目を通したバハナのベテランの先生から、こんなことを言われました。
「バハナの学生は全員、医療系の大学・短期大学を卒業しています。
この程度内容なら1,800問も解答しなくても十分に理解できますよ」
バハナという日本語学校は、インドネシアから日本へEPA介護士・看護師の人材を多数送り出した実績のある日本語教育機関です。ご存知の通りEPAで日本に来る学生は年間で約300名と非常に狭き門です。また、国費による教育がおこなわれるため、優秀な学生を集めて、インドネシア政府から認められたレベルの高い日本語学校で日本語教育を実施しています。そうした実績のある日本語学校だからこそ、EPA以外でも医療系の大学・短期大学を卒業した優秀な学生が集まって来るのです。
また、バハナは学生に対して非常に厳しい指導をすることでインドネシア国内では有名ですが、それには明確な理由があります。バハナで厳しく指導しておけば、日本で多少厳しいことがあっても、それを厳しいと感じないようにするためなのです。これは困難な仕事やホームシックを乗り越えるためには非常に重要な事であり、実際に日本でバハナの卒業生と会って話を聞いてみると、みんな口を揃えて言います。
「日本の職場よりバハナの方がよっぽど厳しかった」
トラブル2:詰めが甘い!
そのようなベテランの先生のアドバイスを受け、翻訳する問題の絞り込みを行いました。簡単な問題やある程度内容が重複している問題は削除しつつ、重要なポイントは外さないようにして、約900問にまで絞り込み、翻訳を開始してもらいました。結果として授業開始には間に合いませんでしたが、並行して翻訳を進めてもらったため学生への影響はありませんでした。バハナの日本語の先生に、非常に助けられました。
一方で、8月11日より予定通り授業がスタートするにあたり、その前日に、日本語の先生と学生が受験する日を打ち合わせして、9月18日に目標を設定しました。先生に受験の申込をお願いし、学生とも目標日程を共有して授業をスタートしたのですが、この時の私の甘いやり取りが、後のトラブルを生む原因となったのです。授業は1日4コマ:合計6時間を5週間に渡って実施するスケジュールでした。授業は順調に進み3週間目の模擬テストでは、11人中10名が合格ラインを十分に突破していました。このままのペースで勉強を続ければ9月18日の試験本番は余裕を持って迎えられる・・・・・そう思った矢先に、日本語の先生よりトラブルの報告を受けました。
「受験の申し込みを忘れていました・・・」
どうやら、日本語の先生より受験申込の準備を指導する先生に、9月18日の受験希望がうまく伝わっていなかったようで、特定技能の試験のことをよく理解していなかったことも重なって、なんとなく宙に浮いた状態となっていたのでした。あわてて申し込みを試みるも、既に満席となっていたため、私は一人で次善策をどうするのか、学生のモチベーションをどうするのか、慌てふためいたのでした。しかし、日頃のおこないが良いせいか、半分だけ奇跡が起こりました。な、なんと介護日本語評価試験に大量のキャンセルが出たようで、慌てふためいていた翌日に受験を申し込むことが出来たのです。
この時、私は改めて反省しました。同じく東南アジアの一国であるベトナム人の担当者を相手に学習したことを生かし切れていませんでした。
東南アジアには、日本のビジネス関係者が非常に戸惑う、南国特有の緩ぅ~~い時間が流れています。このトラブルの時も、インドネシアの日本語の先生は全く慌てる様子もなく、「どうしましょう?」と、のんびり構えていました。
<しつこいぐらいに確認しないと、正確な仕事は出来ない・・・>
介護日本語評価試験が受験できただけでもラッキーでした。もちろん、9月22日から授業をスタートした第2組では、スタートする前に、しつこいぐらいに受験日を確認し、申込完了を確認したのは言うまでもありません。
ネットを活用した授業 ~ そして合格へ!
9月18日に介護日本語評価試験を受験した第1組の11名は、無事に全員合格できました。そして残る介護技能評価試験は10月22日に、こちらも全員合格いたしました。
当然、日本から日本人が現場に行って介護の授業をしたわけではありません。今流行りのZOOMをフル活用してインターネットを活用した授業を行いました。通訳の先生と連携し、具体的にわかりやすい授業がネット経由でも十二分に出来るということが証明できたと思っています。
(授業の風景)9月22日から介護教育をスタートした第2組13名は、1組の反省点を生かして、教材を修正し、更に授業がスムーズに進みました。直前の模擬テストでは全員が90%前後の点数を取るなど、授業の内容に手応えを感じています。
そして11月1日、全員合格という嬉しい知らせが写真とともにLINEで送られてきました。
<2組13名 全員合格しました!>
第2組はJFT-Basicの受験を11月12日に控えているため、介護の授業だけでなく日本語の授業も並行して受講しており、毎日夜遅くまで勉強していました。インドネシアの朝は早く、毎日4:30には起床して朝のお祈りをしています(イスラム教徒の場合)。そんな学生が夜の23時まで勉強して努力した結果が、全員合格でした。
まだ24名の実績ですが、合格率は100%です。
これは授業の内容だけでなく、バハナの学生そして日本語の先生を含めた人材の質の高さとの相乗効果だと考えています。このような学生達が今、日本を目指して勉強中です。学生たちは両親や兄弟のため、そして自分の将来のためキラキラと輝く目で努力を続けることができます。このような人材に出会えた私はとても幸せです。彼女ら彼らが日本に来て良い仕事ができるよう介護の基礎をこれからもしっかりと伝えていこうと準備しています。
※ インドネシア介護人材に興味をお持ちの方は、以下までお問い合わせください。
電話:072‐725‐3388 または メール:info@hni.co.jp
法人営業部 : 中村、前田 まで