「特定技能」インドネシア介護人材の受入手続 その①
特定技能介護人材を母国より迎え入れる場合、国ごとに手続が異なります。
日本政府が特定技能に関する協力覚書(MOC)を締結している関係各国とは特定技能制度の目的や相互連携の他、試験や手続についての約束やルールを定めています。特に手続は国により違いが大きいため、外国側の制度内容を事前に把握することが大切です。
但し、コロナの影響により来日がストップしていたこともあり、実運用が追いついていないこともあります。その実情も含めインドネシアから特定技能介護人材を受入れる際の手続について3回にわたり説明します。
<目 次>
※ 受入の全体像は、以下の図の通りとなります。この図の内容を分解してご説明いたします。
◯インドネシアから新たに受け入れる場合の手続の流れ(出入国在留管理庁HPより)
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri06_00108.html
◆マッチングについて
日本の求人者(介護施設)とインドネシアに住む求職者(インドネシア介護人材)が出会う場となるのが、インドネシア政府の労働省が管理するジョブ・マッチングシステム「労働市場情報システム(IPKOL)」です。
名前から連想して「両者を結び付けてくれるもの」と解釈してしまうかもしれませんが、求人者と求職者が出会う場として設けられているだけで、インドネシア政府が積極的に両者を結びつけてくれるわけではありません。どちらかと言えば互いの連絡先を示した「掲示板」のような役割と言えるでしょう。
求人者(介護施設)と求職者(インドネシア介護人材)は、 ①登録・申込 をおこないます。インドネシア政府は日本の介護施設がこのIPKOLへ求人情報を登録して、求人することを強く推奨しています。技能実習制度では「送出機関」が両者を結び付ける仲介業者としての役割をしていますが、特定技能制度においてはインドネシア政府による送出機関の認定は行なわれていません。そのため特定技能制度においては仲介業者を介させずに、インドネシア介護人材と直接雇用関係を結ぶことが可能です。
◆雇用における注意点
IPKOLを通じて出会った求人者(介護施設)と求職者(インドネシア介護人材)は、お互いに連絡を取り合い、相手側の意志が確認されれば、②雇用契約の締結をします。
特定技能における雇用契約締結には注意が必要です。それは特定技能介護人材の雇用条件は同じ仕事をする日本人の雇用条件と同等以上にしなければならないということです。賃金は日本の最低賃金を守るのは当然のこと、同じ条件で同じ仕事をしている日本人に賞与があるなら、特定技能介護人材にも賞与を支払う必要があります。労働時間も有給休暇・特別休暇も日本人と同じ雇用条件でなければなりません。
労働基準法等の適用はもとより税金・社会保険も日本人と同じく適用されます。在留資格がいずれであっても、日本国内で働く外国人労働者に対して同じ仕事をする日本人労働者を下回る条件を設けることは許されていないからです。
◆介護施設がおこなう入国手続
インドネシア介護人材を在留資格「特定技能」で迎え入れるために、介護施設は地方出入国在留管理局(以下、「入管」と言います)へ ③在留資格認定証明書交付申請 をおこないます(下図参照)。申請書類の中には雇用するインドネシア介護人材のサインが必要なものもあります。分厚い2~3センチにも及ぶ書類の束ですが、インドネシア介護人材が理解できるよう翻訳をし、インドネシアに送ります。サインが終わった書類とインドネシアで受診した健康診断の結果を合わせて日本へ送ってもらうなど、インドネシアとの直接やり取りも必要です。
入管に申請書類を提出してから ④在留資格認定証明書 が介護施設に交付されるまで、約1ヵ月~3ヶ月かかるとされています。これは標準処理期間と言い法務省ホームページに記載されていますが、絶対に3ヵ月以内に証明書が交付されるわけではありません。標準処理期間とはあくまで目安であり、3ヵ月以上かかる場合もあります。実際の在留審査の処理期間(平均日数)は四半期ごとに公表されており、特定技能1号だと2021年7月~9月では67.9日、10月~12月では56.9日、2022年1月~3月では59.9日を要しています。
⑤交付された在留資格認定証明書は、雇用契約を結んだ特定技能介護人材の元へ日本から国際郵便で送ります。インドネシアの首都ジャカルタには通常4日で到着しますが、国土が広く、都市部から離れれば離れるほど郵便事情が悪くなるため更に日数がかかります。
◆まとめ
今回はインドネシア国より特定技能介護人材を日本へ迎え入れる手続の流れのうち、主に日本側で必要となる手続を説明しましたが、在留資格認定証明書の交付申請をするためには、健康診断書の提出、書類への押印やサインなどが必要です。書類への押印やインドネシア介護人材のサインとなりますと書類が日本とインドネシアを往復しますので最低でも10日(コロナ禍の影響下では約25日の例もあり)が必要です。他に提出を求められる公的書類も整えて入管へ提出するには準備に1~2ヵ月が必要でしょう。そして入管での審査の実績を見ると在留資格認定証明書の交付には1~3ヵ月が必要です。また、在留資格認定証明書が交付されたら、それをインドネシアへ国際郵便で送ってビザ(査証)を取得しますが、そのようなことも含めた日本入国準備には1~1.5ヵ月前後が必要でしょう。そうすると面接~内定から日本に入国するまでに概ね4~6ヵ月程度が必要となります。インドネシアの特定技能介護人材を日本に迎え入れる場合には事前に入国までのスケジュールを把握して、準備を進めることが大切なのです。
次回は主にインドネシア側の手続きについてご説明いたします。