円安の衝撃! 選ばれなくなる日本
円安・・・円の価値が米ドルに対して急激に安くなっています。1年前は100米ドルを11,364円で買えたのに、今では14,481円出さないと買えません(2022年9月末)。つまり日本円から見ると米ドルの値段が30%近く上昇しました(日本円の値段が約30%下落しました)。この影響は来日する外国人労働者にも大きな影響を与えています。円安がどのような影響を与えるのか確認してみました。
(目次)
◆対米ドルで大幅な円安/ベトナムドン(VND)は?/インドネシアルピア(IDR)は?
◆住民税・所得税の免除? 円安と何の関係??
9月5日、日本を訪問中のベトナムのダオ・ゴック・ズン労働・傷病軍人・社会事業大臣が加藤勝厚生労働大臣と会談しました。その時、ズン大臣が加藤大臣へ「技能実習生の住民税・所得税を免除して欲しい」と要望しました。これには様々な理由が考えられますが円安による技能実習生の手取り給与(ベトナム通貨に換算した手取り給与)の目減りも影響していると考えられます。もし実現したら日本人労働者との間で不公平感が生じるため実現は難しいと考えます。しかし、ベトナム側にも言い分があります。円安のダメージは非常に大きく、その影響で技能実習生という名の労働者が日本に行くことを躊躇しているのです。労働者の海外派遣に力を入れているベトナム政府としては、海外で働く意欲を、労働者に持って欲しいという思惑があると考えられます。
ベトナムから来日する労働者が減少すると予想されるなか、今インドネシアが注目されています。実際に「ベトナムで募集しても人が集まらない。でもインドネシアで募集すると人が集まる」という声を聞きます。インドネシアに円安は関係ないのでしょうか? 両国の比較を通じて、円安の影響を確認しましょう。
◆基軸通貨「米ドル」が全ての基本
私たちが海外旅行に行く時、空港で手持ちの「円」を訪問国の通貨に交換します。交換レートがTV画面に表示されており、手数料を支払って訪問国の通貨を手に入れることが出来ます。このときTV画面に示されている交換レート表には、円と訪問国通貨との交換レートが表示されているので、あたかも円と訪問国通貨との間でレートが決まっていると錯覚しますが、実は違います。通貨の交換レートのほとんどは、「対米ドル」を軸に決まっているのです。
簡単に書きますと、円⇔(米ドル)⇔訪問国通貨という図式になるのです。米ドルが表示されないだけで、実際には米ドルを介して交換レートが決められているのです。
◆対米ドルで大幅な円安/ベトナムドン(VND)は?/インドネシアルピア(IDR)は?
それでは、この1年間の米ドルとの高安関係の表を作成しましたのでご覧ください。
米ドルに対して円だけが突出して安くなっていることがわかります。日本は完全な変動相場制なので日米の金融政策の違い等がストレートに反映されます。
インドネシアは変動相場制ですが様々な規制があるため、完全な変動相場制とは言えません。例えばインドネシアは天然資源大国です。天然資源の売却で得た外貨はIDRに交換して国内の銀行に入金しなければなりません。最近は資源が高騰していることもありIDRに対する需要が強く、対ドルに対して安くなりにくい構造になっています。
ベトナムは管理相場制となっています。ベトナム中央銀行が為替の変動率を決めており、為替操作を通じて国家としての意向を反映しています。また米中貿易戦争の影響により対米貿易で大幅な黒字となっていることもVNDが安くなりにくい構造となっています。
◆円:VND、円:IDR
このようにして米ドルとのレートが決まり、その次に円とそれぞれの国とのレートが決まります。それでは円とのレート表を確認しましょう。
表の右下に注目してください。円は両国通貨に対して大きく円安となっています。9月末現在のレートだとVNDに対して21%、IDRに対して16%の円安です。
両国の差は5%に過ぎません。しかし、ベトナムからは来日する労働者が減少し、インドネシアからは来てくれる・・・
私は確認のためベトナム・インドネシア両国の送り出し機関に話を聞きました。ベトナムでは一部の送り出し機関しか介護人材を集めることが出来ていないようです。それに対してインドネシアではしっかりと介護人材が集まっており、円安の影響は感じません。この違いの原因は何なのでしょうか?
◆まとめ
コロナの水際対策の影響で海外からの入国がストップしました。日本が門扉を固く閉ざしている間に世界は大きく動きました。もはやベトナムの人にとって「日本に行って働くこと」が夢を掴むチャンスだと考えられていた時代は過ぎ去ったと思われます。様々な原因が絡み合っていますが、大きな要因は円安にあると考えて間違いありません。次回は円安がどのように影響しているのか、インドネシアと比較してご説明いたします。