介護業界と円安 アジアにおける日本の立場

介護業界と円安 アジアにおける日本の立場

(目次)

◆日本と韓国

◆台湾・香港・シンガポール

◆オーストラリア

◆日本の優位性は?

◆最後に

このところの急激な円安が、アジアにおける日本の立場を低下させています。特に日本で働いている又は働こうと考えている外国人労働者にとって、円安は母国通貨との比較において収入が減ることを意味します。それでは、日本がどれだけ立場が低いのかを確認します。(円安の衝撃! 選ばれなくなる日本 介護業界と円安 ベトナムとインドネシア も是非お読みください)

◆日本と韓国

韓国もベトナム人労働者を始め海外から労働者を積極的に受け入れています。その韓国は対米ドルにおいてどのようになっているのでしょうか。

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日本円・韓国ウォンとも、対米ドルに対して大幅に安くなっています。日本との差は4%ほどですので、外国人労働者から見れば為替について大きな差は無いと言えるでしょう。しかし、韓国は国の事業として外国人労働者の受け入れをおこなっています。門戸は狭いものの日本より好待遇であること、K-POPに代表される韓流ブームにより若者は日本より韓国に興味を持っていること、特に対ベトナムについては韓国の方が日本を圧倒する投資をおこなっており、産業から観光に至るまで日本は完全に後れを取っています。韓国は日本より高齢化のスピードが速いため、アジアの(特にベトナムの)介護人材の取り合いとなることは明白です。

◆台湾・香港・シンガポール

この3ヶ国を比較すると、台湾が対米ドルに対して安い状況ですが、日本ほどではありません。

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香港・シンガポールの国民一人当たりGDPは既に日本より大きく、金持ちの国です。また、台湾は日本・韓国に肉薄しており、このままでは日本が追い抜かれるのも時間の問題です。介護人材の獲得競争において、好待遇を提示できる経済力が無ければ、介護人材はこれら3ヶ国に行く可能性が高いでしょう。香港・台湾は2025年に、シンガポールは2030年に超高齢社会を迎えると推計されています。まさにこれら本格的に介護人材の争奪戦に参戦してくるものと思われます。特に香港・シンガポールの富裕層は英語が使える人も多いため、英語を話せるフィリピン介護人材は両国との親和性が高いと言えるでしょう。

◆オーストラリア

資源大国でもあるオーストラリアは、対米ドルに対して強い状況です。

オーストラリア.jpgつまり、一年前からオーストラリアで働いていたら、予定より多く貯金が出来る計算です。我々日本人も日本ではなくオーストラリアで働いてオーストラリアドルで給料がもらえたら・・・と考えてしまうぐらい羨ましい状況です。オーストラリアが超高齢社会を迎えるのは2060年頃と推計されています。介護人材が不足してオーストラリアと取り合になるのはまだ先だと思いたいのですが、オーストラリアも英語圏です。英語を話せるフィリピン介護人材との親和性は高いため、香港・シンガポールと共にフィリピン介護人材の争奪戦の相手だと言えるでしょう。

◆日本の優位性は?

今回は、介護人材の獲得競争相手としてアジア・オセアニア地域の国々の対米ドルに対する強弱を確認しました。いずれの国も日本と同等もしくは日本より強い経済力を持ち、好待遇で招き入れることが出来る土台があります。好待遇の先には優秀な人材が集まり、低待遇の先にはそれなりの人材しか集まらない。それが厳しい現実です。今回は取り上げませんでしたが、アジア・オセアニアの国々だけでなく、ドイツやオランダといったヨーロッパの国々もアジアの介護人材を求めています。ヨーロッパの国々は日本より国民一人当たりGDPが高い国がゴロゴロしています。日本はこれらの国と介護人材獲得競争をしなければならないのです。

それでは、日本に優位性は無いのでしょうか。

もし日本に優位性があるとするならば、一つは就職のし易さでしょう。人口1憶2千万人(世界第7位)のうち3,627万人が65歳以上の高齢者(2022年9月15日現在の推計/高齢化率29.1%)で、686万人の要支援・要介護高齢者数(2021年6月暫定値)は更に増加が予想されています。今後も就職先が多く生まれるため他国に比べて就職し易いという現実があります。

もう一つは日本の安全性です。他国のような民族対立や地域間紛争・テロなどは皆無ですし、国家が強権を発動して人民を暴力的に押さえつけることもありません。大切な子供(特に娘を)を海外へ出稼ぎに送り出す親の気持ちを考えると、日本の安全性は優位なポイントなのです。

◆最後に

就職先の多さと安全性だけでは、いつまでも介護人材を引き付けることはできません。日本の介護業界は、国に頼らず介護人材の獲得競争に勝ち抜く考えを持つ必要があります。その競争に勝ち抜くには、以下のプロセスを経て外国人介護人材の「信頼」を勝ち取る方法が良いと考えます。

  ① まずは外国人介護人材を受け入れる 

  ② 外国人介護人材が安心して働き続けられる環境を整える

  ③ 今働いている介護人材から母国の後輩へ、「良い就職先です」とPRしてもらう 

  ④ 先輩の話を聞いた介護人材が逆指名をする 

①~④の正の循環を作り出すことが必要です。 

   「先輩が勧めてくれる◯◯法人なら行きたい」

   「◯◯法人なら安心して娘を送り出せる」

「日本に行きたい」ではなく「◯◯法人に行きたい」と思われることが必要なのです。もう競争が激化するのは目の前です。準備はできておられるでしょうか。

円安の衝撃! 選ばれなくなる日本 介護業界と円安 ベトナムとインドネシア も是非お読みください)