ご注意ください! 技能実習から特定技能へ 変更手続きのスケジュール
前回は技能実習から特定技能へ在留資格を変更する際に、スケジュールをどのように考えるかを大きな視点からご説明いたしました。今回は細部の具体的な業務から、スケジュールをどのように立案していくか、ご説明いたします。
<目次>
◆ 無試験で在留資格を変更するには「技能実習2号を良好に修了すること」が必要
◆ 介護の特定技能 3つの試験
在留資格「特定技能」の許可を得る条件に「日本語・技能試験の合格」があります。特に介護分野では、他の分野よりも日本語の試験が一つ多いという特徴があります。専門分野の試験が2つありますので、他分野の技能実習生が介護の試験に合格するには、十分な勉強時間が必要でしょう。
① 介護日本語評価試験 ② 介護技能評価試験 ③ 日本語能力試験(または国際交流基金日本語基礎テスト)
上記の3つの試験のうち、①と②が専門分野であり、専用のテキストがあります。また、介護技能評価試験は母国語で受験が可能なため、ハードルが低く感じられます。しかし、医療系の学校を卒業していなければ、例え母国語でも中途半端な勉強では合格できないでしょう。ましてや技能実習生として就労しながらの勉強となると、非常に苦労します。しっかりとした学習スケジュールの立案も必要です。
①と②の試験はかなりの頻度で実施していますから、何度も受験すればいずれ合格すると思われがちですが、不合格後45日間は再受験ができないので注意が必要でしょう。1度は不合格になること前提に在留資格変更許可申請書の提出予定日から逆算した受験スケジュールを立案する必要があります。
公益社団法人 日本介護福祉士会HPより(特定技能 介護 テキスト)
◆ 無試験で在留資格を変更するには「技能実習2号を良好に修了すること」が必要
技能実習から特定技能へ変更する場合、同一分野は条件的に非常に有利です。介護分野の技能実習生の場合、前述の3つの試験が全て免除される条件があります。それは「技能実習2号を良好に修了すること」です。それは、以下のAおよびBを意味します。
A) 技能実習計画を2年10ヵ月以上修了している。
B) 介護技能実習評価試験:専門級に合格している。
B)に合格して入手する合格証書は、最寄りの入管へ技能実習2号から特定技能への変更許可を求める申請書類を提出する際に、必要となります。つまり、9月1日の時点で合格証書を入手しておく必要があるのです。通常ですと技能実習2号の計画満了の6ヵ月前までに受検が必要なので、スケジュールとして心配する必要はありません。但し、受検者数の増加やコロナの影響により実習生の評価試験を担当しているシルバーサービス振興会の体制が追い付かず、試験が後ろ倒しになっているケースがありますから注意が必要でしょう。
技能実習から特定技能へ変更する・しないに関わらず、技能実習2号を修了するためには専門級を受検する必要があるため、受検は早めに済ませることをお勧めいたします。
一般社団法人シルバーサービス振興会HP参照
ここでお気づきの方もいらっしゃると思います。在留資格変更許可申請のスケジュールについて、前回のコンテンツで<在留期間満了日の3ヵ月前頃から受け付けてもらえる>とご説明いたしました。3ヵ月前頃から受け付けてもらえるのは事実なのですが、「技能実習2号を良好に修了すること」の条件にある<技能実習計画を2年10ヵ月以上修了している>より1ヵ月早くなります。
それじゃあ、介護の技能実習生の場合、在留期間満了日の2ヵ月前を目指して申請すれば良いのですね!
このような声が聞こえてきます。しかし、私は声を大にして言いたい!
ギリギリの予定では、突発的なトラブルに対応できません。あくまでも在留期間満了日の3ヵ月前を目指すべきです!
◆ 外国人支援は誰がするのか
技能実習から特定技能へ在留資格を変更し、特定技能外国人材を受入れる場合、外国人への支援が義務付けられます。義務とされている支援の内容は以下の10項目になります。
① 事前ガイダンス ②出入国する際の送迎 ③住居確保・生活に必要な契約支援 ④生活オリエンテーション ⑤公的手続等への同行 ⑥日本語学習機会の提供 ⑦相談・苦情への対応 ⑧日本人との交流促進 ⑨転職支援(人員整理等の場合) ⑩定期的な面談・行政機関への通報
詳しくはhttps://www.hni.co.jp/1034/(特定技能外国人介護士へ介護施設が行う支援)をご参照ください。
これらの支援を介護施設様が担うのか、登録支援機関に全てを委託するのか、決定する必要があります。介護施設様が担う際の注意点として、「支援できる人員・ノウハウの有無」と「母国語の通訳の確保」があげられるでしょう。また、登録支援機関に全部委託する場合には、登録支援機関を探し~交渉し~契約する一連の業務を終える必要があります。書類作成スタートの8月1日より1ヵ月前の7月1日までには方針を決定し、通訳者・登録支援機関を探す~交渉する~契約する必要があるのです。
◆ 里帰りの希望を確認する
技能実習2号から3号へ移行する場合、3号開始前または開始後1年以内に一旦帰国(1ヵ月以上)させる義務があります。技能実習2号から特定技能へ変更する場合、この義務はありませんが、帰国を希望する可能性は十分に考えられます。特定技能へ変更する場合は帰国期間の長さに決まりは無いため、介護施設様と外国人介護人材との話し合いになります。ここで注意しなければならないのは、「在留カード」です。最寄りの入管へ在留資格変更許可申請書を提出する際に、対象となる外国人介護人材の「在留カード」を提示しなければなりません。里帰りのスケジュールもしっかりと把握しましょう。
また、同時に複数人の在留期間満了日が迫り、在留資格を変更する(2号から3号、2号から特定技能)場合、一人が里帰りを決断すると、後になって全員が里帰りを希望するケースもあります。勤務シフトの調整や最寄りの入管へ書類を提出する日程などの調整が必要となります。突然の申し出を回避するためにも、技能実習生が3年目に入ったら定期的な面談を通して意思確認を継続する必要があるのです。
◆ まとめ
技能実習から特定技能へ在留資格を変更する場合のスケジュール
在留期間満了日の
12ヵ月前 技能実習生への情報提供と面談を開始 意思確認をおこなう
9ヵ月前 別分野の技能実習生の場合、受験勉強期間および2回の受験予定を加味
5ヶ月前 外国人支援を登録支援機関に依頼するのか、自法人で実施するのか決定
4ヵ月前 申請書類の作成を開始
3ヵ月前 在留資格変更許可申請書を、最寄りの入管へ提出(目標)
介護の技能実習生が2号を良好に修了する条件を満たす場合、本来なら2ヵ月前に提出すれば良いが、不測の事態に備えて3ヵ月前を目標とする。
上記は余裕を持たせたスケジュールではあるものの、申請手続は不測の事態が生じると思った方が無難でしょう。
「やっぱり帰国する」「考えが変わって在留する」
外国人材の心は揺れるものです。スケジュールを睨みつつ外国人材の心に寄り添った対応が必要となります。