法改正に注意! 外国人介護人材の年末調整

法改正に注意! 外国人介護人材の年末調整

<外国人労働者を受け入れたけど、年末調整は必要なの? どうすればいいの?>
と悩む担当者も多いのではないでしょうか。外国人労働者の場合、母国の家族に仕送りをしている場合も多く、家族の大黒柱として期待されています。今回は外国人介護人材(在留資格:技能実習・特定技能・介護・特定活動/EPA)の方に絞り、年末調整についてご紹介いたします。

(目次)

◆ 外国人介護人材に納税義務はあるのか

◆ 外国人介護人材に年末調整は必要か?

◆ 納税者の区分

◆ 外国人介護人材の年末調整に必要なもの

◆ 税制改正に伴う変更点に注意!

◆ まとめ

◆ 外国人介護人材に納税義務はあるのか

外国人労働者の中には、日本での納税義務がない場合もあります。今回は外国人介護人材(在留資格:技能実習・特定技能・介護・特定活動/EPA)の方に絞ってご説明しますので、外国人介護人材の場合、日本国・自治体に対する納税義務が生じます。

◆ 外国人介護人材に年末調整は必要か?

年末調整は、源泉徴収された所得税を対象として行われます。住民税は前年の所得に基づいて課税額が決まるため、年末調整の対象ではありません。

外国人介護人材には納税の義務があります。よって所得税を納めています。そして、年末調整は原則として給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しているすべての人を対象とします。申告書を提出していれば日本人と同様に外国人介護人材も年末調整の対象となります。

◆ 納税者の区分

所得税法では、住所または居所の有無、日本国籍の有無、居住期間の長短に応じて、納税者を①居住者、②非永住者、③非居住者と区分しています。

外国人介護人材は②に該当し、国内の所得には全額課税され、海外の所得がある場合でも日本国に送金された金額のみ課税されます。(海外所得~海外保有は課税対象外)

◆ 外国人介護人材の年末調整に必要なもの

①保険の控除

外国人介護人材が生命保険や地震保険などに加入している場合、日本人と同様に保険会社が発行する控除証明書が必要です。しかし、外国人介護人材が自ら生命保険や地震保険に入っているケースは極めて稀でしょう。また、母国で生命保険や地震保険に加入している場合が考えられますが、原則として日本では所得控除の対象となりません。

②国外の扶養親族

国外に住んでいる親や子供などの親族を扶養に入れるケースがあります。この場合、国外に住む家族が扶養控除を受けられる対象者だと証明できる書類が必要です。そこで必要となるのが、<親族関係書類>および<送金記録>の2つです。

<親族関係書類>とは、

A)外国政府または外国の地方公共団体が発行した、扶養親族が外国人介護人材の親族だと証明する書類(扶養親族の名前・住所・生年月日の記載があるもの)

B)戸籍の附票の写しor外国政府または外国の地方公共団体が発行した、扶養親族が外国人介護人材の親族だと証明する書類 + 国外居住の扶養親族のパスポートの写し

来日する外国人介護人材の扶養親族はパスポートを取得していることが少ないため、上記(A)を用意する場合が多いでしょう。また、(A)の証明書については、発行日に関する規定はありません。扶養親族に異動が無ければ、1年以上前に発行された証明書でも有効です。

家族証明.jpg

<送金記録>とは、

日本で稼いだお金を、扶養親族の生活費や教育費用として海外に送金していることを証明する書類です。海外送金依頼書の控えやクレジットカード(扶養親族が家族カードを使い、支払いは外国人介護人材)の利用明細書が該当します。

◆ 税制改正に伴う変更点に注意!

令和5年分より国外の扶養親族の、控除対象の要件が変更されます。扶養親族が30歳以上70歳未満の場合、注意が必要です。外国人介護人材の年齢は20~30代の方が非常に多いです。家族構成を考えると、ほとんどの場合外国人介護人材の両親がこの年齢幅(30歳以上70歳未満)に該当するでしょう。この年齢幅の扶養親族に対する年間の送金額に、新たな要件が追加されました。今までは扶養親族の生活費や教育費用として妥当と思われる金額を送金していれば控除対象となりましたが、令和5年より<年間38万円以上送金する見込み>という要件が設けられました。この要件を知らないまま令和5年を迎えると、令和4年より多く税金を取られることになるので注意が必要です。

◆ まとめ

38万円以上の送金を求める要件は、外国人介護人材の給与手取額を考えるとかなり高いハードルと言えるでしょう。国外の扶養親族は実態が掴みにくいため、母国への送金が本当の意味での「扶養」に当たるのか否か、判断が難しいところです。特に両親の年齢を考えると両親は就労している可能性が高く、扶養に当たらないケースが多いと思われます。今回の税制改正は外国人介護人材にとって増税となる可能性がありますが、日本人との平等を考えると実態に合わせた改正は必要だと思われます。介護施設の担当者は、しっかりと令和5年からの変更点を外国人介護人材に伝え、令和5年の年末調整でトラブルを生じさせないよう気を配る必要があります。