外国人介護人材 政策はどう変わる? ①
人材の仲介機関の適正化と日本語教育
日本の外国人労働者政策に大きな変化が起こりそうです。政府の専門家会議は4月10日に、「外国人技能実習制度」の廃止と、新しい人材確保のための制度を求める中間報告をまとめました。これまで指摘されてきた問題は、
① 技能移転の目的があるものの、実際には人材確保の方法になってしまっていること、
② たくさんの借金を抱えて来日し、悪い労働環境で働いたり、失踪したりする事例があることです。
① ②の問題について、確認します。
(目次)
◆ 技能実習制度は建前から本音へ
中間報告では、新制度の目的を「人材確保」と明確にし、問題①を解決しようとしています。さらに、外国人がもっと長く働けるように、「特定技能」などの在留資格やキャリアパスについても言及しました。専門家会議は、国境を越えた人の移動を活性化し、人材確保を促す方法として、技能や経験の評価制度を考慮していくことを期待しています。
◆ 仲介機関の適正化へ
一方で、問題②は、技能実習制度に固有の問題であるかのように指摘されてきましたが、実際にはそうではありません。例えば、韓国や台湾では、低熟練の外国人労働者を「実習生」ではなく「労働者」として受け入れていますが、同様の問題が発生しています。つまり、問題②は、特に中・低熟練労働者の国境を越える労働移動に共通する問題です。
これに基づいて、企業と労働者を結びつける仲介機関をどのように改善するかが重要です。仲介機能は、受け入れ企業と海外の労働者をつなぐために必要です。民間の仲介機関を活用することが求められますが、コストがかかりますし、複数の仲介者が関与すると手数料が高くなるため、何らかの管理が必要です。
中間報告では、監理団体と登録支援機関、すなわち日本側の仲介斡旋機関の要件を厳格化する内容が含まれています。ただし、要件を満たした後の運用安定策は今後検討されるべき課題となっています。具体的な施策としては、法令遵守状況などの外形基準を設定し、政府機関HPでの紹介、適切な機関に対する手続きの優遇措置・経済的な優遇措置などが考えられます。特定技能2号の対象範囲が拡大し、長期滞在者や家族が来日することが増えると、日本社会はより馴染みやすい環境を整備する必要があります。
◆ 継続的な日本語教育の重要性
日本社会になじみやすい環境を作るために必須となるのが日本語教育です。22年11月に文化庁は、中長期的な在留や定住の増加を踏まえ、地域の日本語教育の目標レベルを中級程度に設定しました。これまで自治体などが主催する日本語教室は、初心者を中心に対象としていたため、目標の引き上げが求められていました。
しかし、自治体の厳しい財政状況や日本語教員の不足が課題で、実現が簡単ではありません。また、子ども向けの教育も問題となっています。日本語指導が必要な児童生徒は全国で約58,000人おり、文部科学省は小中学校でこれらの子どもたちに日本語を教える制度を整備していますが、指導者の不足等の理由で、実際に授業を受けられているのは7割程度に留まっています。家族が同伴するケースが増えることを考慮すると、教育環境の充実が不可欠です。
◆ まとめ
重要なのは、介護施設と外国人介護スタッフを結びつける仲介機関の改善です。外国人介護スタッフが過剰な借金を負わされないように、コストや手数料の問題解決が求められています。中間報告には、日本の仲介機関の基準を厳格化し、運用上の健全性を検討することが盛り込まれています。ただし、すでに外国人介護スタッフの受け入れを考慮している場合は、法律の変更を待たずに適切な機関に仲介を依頼することが、介護施設に求められています。
また、特定技能2号の対象拡大が提言されています。介護分野は対象外(介護福祉士試験合格による在留資格「介護」があるため)ですが、日本社会になじんでもらうには継続的な日本語教育は必須でしょう。日本語教育においては自治体の財政難や教員不足が課題となっています。受入機関として継続的な日本語教育を提供できる体制の構築が求められることでしょう。