目次
はじめに
特定技能とは、国内人材の確保が難しい産業分野に、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格の一つです。介護分野でも、特定技能の外国人介護スタッフが増加しています。この記事では、特定技能外国人を受け入れる際の流れや注意点を詳しく紹介します。
特定技能外国人の受け入れ人数
2019年4月の運用開始以来、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の数は増加しています。介護分野では、2023年1月時点で17,066人、2023年6月末には21,915人が受け入れられています。2022年8月には、特定技能外国人の受け入れ上限が5万9,000人に引き下げられました。受け入れ準備を早めに進めることが重要です。
特定技能外国人を受け入れるまでの流れ
海外から来日する場合と、日本在住の外国人を受け入れる場合で手続きが異なります。
海外から来日する外国人の場合
- 試験に合格する:技能試験、日本語試験、介護日本語評価試験の3つに合格が必要です。
- 雇用契約を締結:労働基準法に基づく契約を結びます。
- 事前ガイダンスや健康診断の実施。
- 在留資格認定証明書の交付申請:地方出入国在留管理局に申請します。
- 在留資格認定証明書の交付。
- 査証の申請:在外公館へ提出し査証を申請します。
- 査証の発給後、入国。
- 生活オリエンテーションの実施。
- 就労開始。
日本在住の外国人の場合
- 試験に合格する。
- 雇用契約を締結。
- 事前ガイダンスや健康診断の実施。
- 在留資格変更許可申請:地方出入国在留管理局に申請します。
- 在留資格変更許可。
- 生活オリエンテーションの実施。
- 就労開始。
受け入れにかかる費用
費用は国外在住と国内在住の外国人で異なります。
国外在住の外国人を受け入れる場合
- 送り出し機関への費用:20~60万円。
- 人材紹介手数料:10~30万円。
- 在留資格申請費用:10~20万円。
- 在留資格更新申請費用:4~8万円。
- 事前ガイダンスやオリエンテーション費用:1.5~4万円。
- 支援計画に基づいた支援の実施費用:年間24~48万円。
- 渡航費用:4~10万円。
- 住居の準備費用:初期費用全般。
国内在住の外国人を受け入れる場合
- 人材紹介手数料:10~30万円。
- 在留資格申請費用:10~20万円。
- 在留資格更新申請費用:4~8万円。
- 事前ガイダンスやオリエンテーション費用:1.5~4万円。
- 支援計画に基づいた支援の実施費用:年間24~48万円。
- 住居の準備費用:初期費用全般。
介護事業所で採用する際の注意点
特定技能外国人を採用する際には、いくつかの基準や雇用形態の決まりがあります。
受け入れ基準
- 労働・社会保険及び租税に関する法令を遵守していること。
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと。
- 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと。
- 欠格事由に該当しないこと。
- 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと。
- 保証金の徴収等をしていないこと。
- 違約金を定める契約等をしていないこと。
- 支援に要する費用を外国人に負担させないこと。
- 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと。
- 分野に特有の基準に適合すること。
受け入れ可能人数と期間
受け入れ可能人数は、日本人の常勤介護職員と同数です。就労期間は最長5年で、介護福祉士の資格を取得すれば在留資格を変更でき、永続的に働くことができます。
雇用形態
特定技能外国人の雇用形態は直接雇用に限ります。勤務時間はフルタイムでなければなりません。
雇用契約の基準
特定技能雇用契約には以下の基準を満たす必要があります。
- 分野省令で定める技能に要する業務に従事させること。
- 所定労働時間が同等であること。
- 報酬額が同等以上であること。
- 差別的な扱いをしないこと。
- 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させること。
- 労働者派遣の場合は、派遣先や派遣期間が定められていること。
- 帰国旅費を負担すること。
- 健康状況などを把握するために必要な措置を講ずること。
- 分野に特有の基準に適合すること。
自社支援の要件や必要な支援内容
特定技能外国人を受け入れる際には、支援計画に基づいた支援が必要です。具体的な支援内容や支援の要件についても理解し、自社での対応が難しい場合は、登録支援機関に業務委託することを検討しましょう。
特定技能外国人を受け入れる際の支援計画の重要性
特定技能外国人を受け入れるにあたって、受け入れ機関は支援計画を策定し、実行する責任があります。支援計画には、生活面や職場環境のサポートが含まれ、これにより特定技能外国人が日本での生活や仕事に早く慣れることが期待されます。
支援計画に含まれる具体的な支援内容
- 入国時の空港出迎え
- 入国時に空港での出迎えを行い、初めての日本での生活のスタートをサポートします。
- 住居の確保と生活用品の準備
- 住居の確保や生活に必要な家具・家電の準備を支援します。外国人労働者が快適に生活できる環境を整えることが重要です。
- 行政手続きのサポート
- 住民登録や健康保険の加入手続きなど、必要な行政手続きをサポートします。これにより、スムーズに日本での生活を始めることができます。
- 日本語学習支援
- 日本語の学習支援を提供し、日常会話や仕事に必要な言語能力を向上させます。オンラインやオフラインの日本語教室を利用することも考慮します。
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本での生活習慣や文化に関するオリエンテーションを実施し、文化の違いによるトラブルを未然に防ぎます。
- 職場でのオリエンテーション
- 職場でのルールや業務内容に関するオリエンテーションを行い、業務にスムーズに馴染むための支援を行います。
- 生活支援窓口の設置
- 困ったときに相談できる窓口を設置し、生活や仕事に関する悩みを解決するためのサポートを提供します。
登録支援機関を利用する場合の注意点
自社で支援計画を実行することが難しい場合、登録支援機関に支援業務を委託することが可能です。しかし、委託する場合も、以下の点に注意する必要があります。
- 信頼できる登録支援機関の選定
- 適切な支援を行うためには、信頼できる登録支援機関を選定することが重要です。過去の実績や評判を確認し、適切な機関を選びましょう。
- 支援計画の内容確認
- 委託する支援計画の内容をしっかり確認し、自社のニーズに合った支援が提供されることを確認します。
- 定期的な連絡と報告の確認
- 登録支援機関との定期的な連絡を行い、支援状況の報告を受けることで、適切な支援が行われていることを確認します。
特定技能外国人受け入れのメリットと課題
メリット
- 労働力の確保
- 国内の人材不足を補うための即戦力となります。特に介護分野では、高齢化が進む中で重要な役割を果たします。
- 多様性の向上
- 多様な文化や背景を持つ人材が加わることで、職場の多様性が向上し、新しい視点やアイデアが生まれます。
- 国際的な交流
- 特定技能外国人との交流を通じて、国際的な視野が広がり、職員の成長にもつながります。
課題
- 言語の壁
- 日本語のコミュニケーション能力が十分でない場合、業務上のトラブルが発生する可能性があります。継続的な日本語学習支援が必要です。
- 文化の違い
- 文化や習慣の違いからくる誤解や摩擦を防ぐために、相互理解を深める努力が求められます。
- 支援の負担
- 支援計画の実行にはコストと時間がかかります。自社で支援を行う場合、適切なリソースの確保が必要です。
最後に
特定技能外国人の受け入れは、日本の労働市場において重要な役割を果たします。介護事業所においても、特定技能外国人を効果的に受け入れ、適切な支援を行うことで、事業所の発展と労働力の安定を図ることができます。早めの準備と計画的な対応が成功の鍵となりますので、詳細な支援計画を策定し、実行していきましょう。