介護業界の人材難・募集難は近年さらにひどくなっています。「人が集まらないのは給料が安いせいだとわかっているけども、経営を考えると今以上は出せない」という声も聞こえてきます。ただ原因は雇用条件だけではないようです。
介護業界の人手不足状況
公益財団法人・介護労働安定センターは例年、「介護労働実態調査」を行っています。平成28年度は介護保険サービス事業17,641事業所に対しアンケートを行い、約半分の8,993事業所から回答を得ました。
介護事業所の6割以上が人手不足
その結果、「従業員の過不足状況」については、「大いに不足」が8.6%、「不足」が23.1%、「やや不足」が30.9%でした。「適当」としたのは37.0%だけでした。また、「過剰」としたところもありますが、これは0.3%です。
全体の6割以上が人手不足ということになります。この数値は21年度の46.8%からほぼ上がり続けています。
介護業界の人材募集が難しい理由
アンケートからは、「介護業界は採用が困難で、その最大の理由は賃金の低さ」といった状況もストレートに見えてきます。
人手不足の理由は採用が困難
ある意味当たり前ですが、人手不足の理由として「採用が困難である」を挙げるところが最も多く、73.1%となっています。あとは「事業を拡大したいが人材が確保できない」19.8%、「離職率が高い」15.3%と続きます(複数回答)。
採用が困難な理由は「賃金が安い」
その採用が困難な理由としては、「賃金が低い」が57.3%、「仕事がきつい(身体的・精神的)」が49.6%、「社会的評価が低い」41.1%、「休みが取りにくい」23.5%、「雇用が不安定」が16.2%となっています(複数回答)。
これは介護業界に興味を持っている人のほぼイメージどおりではないでしょうか。
手詰まり感がある求人対策
アンケートでは同時に「いまの介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を払えない」「経営(収支)が苦しく、労働条件や労働環境の改善をしたくてもできない」という声も上がっています。
「原因はわかっているけども、打つ手がない」といった嘆きが聞こえそうです。
意外にも低賃金を理由にやめた人は少ない
ただ、同じ調査で「低賃金が最大のネック」を否定するような結果も出ています。
退職の最大の理由は人間関係
この調査では、各事業所で3人を上限に労働者側にもアンケートを実施しています。「介護関係の仕事をやめた理由」に対する回答は、上位から順番に次のようになっています(複数回答)。
1. 職場の人間関係に問題があったため=23.9%
2. 結婚・出産・妊娠・育児のため=20.5%
3. 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため=18.6%
4. 他によい仕事・職場があったため=18.2%
5. 自分の将来の見込みが立たなかったため=17.7%
6. 収入が少なかったため=16.5%
「収入が少なかったため」でも6番目でしかなく、雇用条件を直接の理由にしたと考えられるほかのものも上位3つには入っていません。
この調査結果に注目するならば、「経営者側が考える問題点と、労働者(スタッフ)側が考える問題点にはずれがある」と言えそうです。介護事業経営者は「低賃金のせいで人が来てくれない。来てもすぐにやめてしまう」だけではなく、ほかの理由の可能性も考えてみたほうがいいかもしれません。
募集について広い視野を持つことが大切
若い人や経験者に応募してほしいという介護施設の方も多いでしょう。しかし、対象を限定してしまうと応募はなかなか増えません。シニア世代や「外国人介護士」等も含め、視野を広げて募集を行ってはいかがでしょうか。
参考: