特定技能の「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」とは?

新たな人材確保として注目される 介護分野の「特定技能」について  Vol.7 

人材不足が深刻な産業分野において、人材確保の仕組みとして期待される「特定技能」。特定技能で外国人が日本で就労するには、所定の試験に合格することが必須です。前回は全分野で実施される「日本語の試験」について解説しましたが、今回は、介護施設で働くために必要な「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」について紹介します。

<目 次>

「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」の概要 

介護技能評価試験について             

介護技能評価試験の出題基準は?          

出題の傾向〜試験結果とサンプル問題        

介護の言葉の習得度をはかる「介護日本語評価試験」 

介護日本語評価試験について            

出題の傾向〜試験結果とサンプル問題        

今後の試験日程                  

試験の申し込み方法、手数料、結果通知などは?   

合格率は高いのか?                

初の学習用テキストが登場!            

「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」の概要

2019年4月から在留資格「特定技能」のための試験が始まっています。今回は14分野のうち、「介護」で必須となる「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」について紹介します。

介護技能評価試験、介護日本語評価試験ともに、第1回の試験が2019年4月にフィリピンで実施されました。その後も次々に試験が実施されていて、試験の結果も公表されています。

介護技能評価試験、介護日本語評価試験、それぞれの試験の概要は、以下のようになっています。

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 (厚生労働省 ホームページより)

介護技能評価試験について

介護技能評価試験の概要と試験内容の構成は、以下のようになっています。

【介護技能評価試験の概要】
問題数:全45問
(学科試験40問)
試験時間:60分
試験科目:
・介護の基本(10問)
・こころとからだのしくみ(6問)
・コミュニケーション技術(4問)
・生活支援技術(20問)
(実技試験:5問)
・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題
合格基準:問題の総得点の60%以上

介護技能評価試験の出題基準は?

介護技能評価試験の出題基準は、以下のようになっています。

[介護技能・技術に関する出題基準]

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 (厚生労働省 ホームページより)

出題の傾向〜試験結果とサンプル問題

介護技能評価試験のこれまでの試験結果は公表されており、以下のような結果になっています。

[フィリピン]2019年
4月:受験者数113人、合格者数94人。合格率83.2%
5月:受験者数336人、合格者数140人。合格率41.7%
6月:受験者数196人、合格者数75人。合格率38.3%
7月:受験者数209人、合格者数82人。合格率39.2%
8月:受験者数254人、合格者数106人。合格率41.7%
9月:受験者数241人、合格者数104人。合格率43.2%

[カンボジア]2019年
9月:受験者数 91人、合格者数6人。合格率6.6%

介護技能評価試験については、まだ実施回数が少ないため、出題の傾向を分析するには至っていません。しかし、厚生労働省のホームページでサンプル問題を掲載しているので、それを参考に推測することはできそうです。

最新の試験結果はこちら

【介護技能評価試験・サンプル問題】

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   (厚生労働省 ホームページより)

これらは日本で介護の勉強をしている人であれば、ごく当たり前の問題といえます。しかし、国や慣習の違い、また現地では介護についての対処法が日本とは異なることも想定されます。そうした点もふまえて、日本での介護を想定した学習が今後は重要になると考えられます。

そもそも海外では、介護施設自体が少なく、介護業務について学ぶ機会が少ない状況もあります。また、フィリピンでは介護に関する資格がありますが、日本で働くためには介護技能評価試験の合格を目指して、新たに勉強すると考えられます。

介護の言葉の習得度をはかる「介護日本語評価試験」

日本語の試験には、特定技能の全分野共通の「国際交流基金日本語基礎テスト」(または「日本語能力試験」N4以上)があります。介護業界で働くためには、それに加えて「介護日本語評価試験」を受験し、合格しなくてはいけません。

特定技能の日本語能力試験では、ある程度の日常会話ができ、生活に支障のない程度の能力が求められます。一方、介護日本語評価試験では、介護現場で業務に携わる上で支障のない程度の介護用語などを使える日本語能力が求められます。

特定技能の人材は「即戦力」ということになっていますから、介護業務を担うにあたって、よく使われる介護の用語が通じないと仕事に支障をきたしかねません。それができているかをはかる試験といえます。

介護日本語評価試験について

介護日本語評価試験の問題数や試験時間、試験の内容などは、以下のように発表されています。

【介護日本語評価試験の概要】
問題数:全15問
試験時間:30分
試験科目:
・介護のことば(5問)
・介護の会話・声かけ(5問)
・介護の文書(5問)
合格基準:問題の総得点の60%以上

これまでの試験結果は公表されていて、以下のような結果になっています。

[フィリピン]
4月:受験者数113人、合格者数97人。合格率85.8%
5月:受験者数336人、合格者数121人。合格率36.0%
6月:受験者数202人、合格者数49人。合格率24.3%
7月:受験者数200人、合格者数91人。合格率45.5%
8月:受験者数279人、合格者数147人。合格率52.7%
9月:受験者数235人、合格者数102人。合格率43.4%

[カンボジア]2019年
9月:受験者数 94人、合格者数 24人。合格率 25.5%

出題の傾向〜試験結果とサンプル問題

介護日本語評価試験は、2019年4月から試験が始まったばかりです。実施回数がまだ少ないので、出題の傾向の分析には至っていません。しかし、厚生労働省のホームページでサンプル問題を掲載しているので、それを参考に推測することはできそうです。

具体的な出題内容は明確ではありませんが、介護日本語評価試験のサンプル問題として、以下の4問が公開されています。

【介護日本語評価試験・サンプル問題】

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サンプル問題の中で「介護のことば」の場合は、日本語が理解できれば、さほど難しくないかもしれません。しかし、「介護の会話・声かけ」や「介護の文章」は、その言葉を使う背景を推測しなくてはいけないので、環境や慣習の違う外国人の場合には理解しにくく、難しいことがあるかもしれません。今後は、そうした背景も踏まえた学習が必要とされる可能性があります。

今後の試験日程

特定技能「介護」に必要な介護技能評価試験と介護日本語評価試験は、初めての試験が2019年4月にフィリピンで実施され、それ以降、実施する国、および都市が拡大しています。

試験の日程については、厚生労働省のホームページで随時更新されています。

○厚生労働省:介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)について)
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

*「2.技能試験と日本語試験について」の「(1)受験申込手続のご案内」の「試験日程」を参照。試験日程は随時更新されます。最新情報にアクセスするために、URLを開いた後にページの更新をしましょう。

2019年11月現在、フィリピン、インドネシア、モンゴル、ネパール、カンボジア、日本で実施される試験の情報が掲載されています。

試験の申し込み方法、手数料、結果通知などは?

●試験の申し込み方法
試験の申し込みは、実施場所により違います。厚生労働省ホームページで最新の情報が確認できます。

●受験手数料
介護技能評価試験、介護日本語評価試験、ともに1000円程度となっています。

●結果通知
試験後1カ月以内を目途に、予約サイトのマイページから結果通知を確認できます。

「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」について詳しくは、厚生労働省ホームページで確認できます。

合格率は高いのか?

介護技能評価試験、そして介護日本語評価試験ともに、試験は始まったばかりといえ、まだ十分な研究がされていません。実際の試験問題は公表されていないので、内容の難易度などをはかることができない状態です。それもあって、公表された合格率が高いのか、それとも低いのか、それもまだ検討ができていないのが現状です。

受験する外国人は、日本の介護業界で働くことを希望している人材です。その願いを叶えるとともに、深刻な介護現場の人材不足解消のためにも、少ない受験回数で合格し、特定技能ビザを取得して、できるだけ早く来日して欲しいものです。

そのためにも、試験問題の分析や合格するための学習についての研究が望まれます。

初の学習用テキストが登場!

そうした折り、介護技能評価試験と介護日本語評価試験に対応した、初の学習用テキストが厚生労働省のホームページに掲載されました。(2019年10月31日公開)

○介護の特定技能評価試験<学習テキスト>〜介護技能・介護の日本語〜
 https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000606158.pdf

公益社団法人日本介護福祉士会によるこのテキストは、日本の介護現場で働く上で、まず習得しておきたい内容がまとめられています。

介護分野の特定技能1号の評価試験に対応する初めての学習用テキストとして策定されたもので、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の受験対策として活用できそうです。

今後、試験実施国の言語への翻訳を進めていくとのことで、日本の介護について理解を深める契機になることでしょう。

次回は、特定技能の介護人材を受け入れる介護施設(受入れ機関)が行う外国人の支援について取り上げます。