外国人の採用に躊躇している時間はない

「外国人の採用に躊躇している時間はない」介護事業者が決断を急ぐべき理由とは

2022年3月より入国制限が緩和され、海外との人の往来が再開されました。そこで、介護会社の経営者や、介護施設を運営している方にお聞きします。

Q:外国人を採用していますか

すでに外国人を採用している介護事業者は、さらに増やしていったほうがよいでしょう。

外国人の採用を検討しているところは、まずは1期生を採用してみましょう。

検討すらしていないところは、危機感を持ったほうがよいでしょう。

日本人介護人材の不足が深刻化することは周知の事実ですが、近い将来に外国人すら採用できない可能性があるからです。

これからアジア全体で外国人労働者の争奪戦が起きるでしょう。その時日本が今の優位性を維持できないかもしれないからです。

介護事業者が外国人採用に向けて「今」動かなければならない理由を紹介します。

中国やアジア新興国と外国人介護人材を奪い合うことになる

もし「本当に日本人が集まらなくなったら、外国人材を採用すれば良い」と思っていたとしたら、それは甘い見通しと言わざるをえません。

自国を出て日本などの先進国に働きに行く人は、自国の1人当たりの国内総生産(GDP)が7,000ドルを超えると減る傾向にあります。自分の国が豊かになれば、海外に働きに行く理由がなくなるからです。

中国は2013年にすでに7,000ドルを超えているので、理論上は中国人が日本に行く魅力は薄れています。

また、ベトナムの1人当たりGDPは2020年で2,785ドルですが、GDPが年7%のペースで上昇すると2030年代のはじめには7,000ドルを超えます(*1)。

このように、今はまだ「憧れのニッポン」に行って働きたいと考えてくれている外国人が多くいますが、この状況はそう長くは続かないだろうと、専門家はみています(*4)。

*1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE024960S1A800C2000000/?unlock=1

中国がアジアの介護人材を大量に確保する

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アジアの介護人材は、中国に向かう可能性があります。

中国はアメリカに次ぐ世界第2位の経済力を誇り、3位の日本を大きく引き離しています。したがって、アジアの介護人材に高い給料を支払ったり、好待遇で迎えたりする力があります。

しかも中国の高齢者(65歳以上)人口は2019年現在1.8億人で、これは日本の全国民(1.2億人)を上回る数です。中国の高齢化率は今後さらに高くなると予測され、2026年の14%から2038年には21%になると考えられています(*2)。

そして現在の中国は、「介護後進国」の状態にあります。中国には4,000万人の要介護者がいるとされていますが、介護人材は30万人しかいません。

つまり中国は、介護人材を大量に必要としています。

中国の介護事情はこのようにまとめることができます。

●中国はまだまだ高齢化する

●現在の中国は介護人材がまったく足りていない

●中国は大量に介護人材を必要としている

●経済大国の中国には、外国人介護人材を集める資金が潤沢にある

日本の介護事業者は、これだけ有利な状況にある中国と、外国人介護人材確保を争わなければならないのです。

*2:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/4550aa0c5cc6c400.html

外国人介護人材を確保するには働きやすい環境をつくらなければならない

外国人介護人材の確保を急いだほうがよい理由はまだあります。

外国人介護人材に働いてもらうには、介護事業者や介護施設が変わっていかなければならず、その準備には相当の時間がかかるからです。

外国人から選ばれる介護事業者や介護施設にならなければなりません。

日本の技能実習制度では、賃金不払いや暴力、セクハラなどが問題になっていて、実習生たちが強い不満を持っています。これは国内問題にとどまらず、アメリカの国務省が、日本の技能実習制度は「賃金に基づく強制労働」であると非難しています(*3)。

*3:https://www.state.gov/reports/2021-trafficking-in-persons-report/

2022年2月18日に行政処分を受けた岡山の建設会社での暴行事件は記憶に新しいところです。(*4) このようなことがいつまでも続いていては、日本に来てくれる人は誰もいなくなるでしょう。

*4:https://news.yahoo.co.jp/articles/ba77d2ff69d58b16167e76cd29d8366bb67e396c

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「安い賃金で確保できる」という考えは間違い

もし介護事業者や介護施設の経営者が「外国人なら安い賃金で雇用できる」と考えているとしたら、あらためたほうがよいでしょう。

待遇は、日本人の介護人材と同等レベルを用意するよう、日本国政府が求めています。

それでも、今の日本の賃金は魅力的とは言い難いレベルです。2020年の日本の国民一人当たりのGDPは世界で29番目です。アジア・オセアニア圏のシンガポール・オーストラリア・香港・ニュージーランドは日本より順位が上ですし、近年は韓国・台湾が猛追しています。それに加えて技能実習生を多く送り出しているベトナム・フィリピン・インドネシアにはヨーロッパの国々も介護人材を求めて入り込みつつあります。

「外国人なら安い賃金で雇用できる」は、既に幻想だと思ってください。

外国人介護人材への教育は好循環への「投資」

介護事業者や介護施設は、日本人の介護人材の教育に苦労していると思います。介護技術を指導するのはもちろんのこと、福祉の心を教えなければなりませんし、接遇やおもてなしのスキルも学ばせなければなりません。

外国人介護人材は、日本人に対する介護教育に加え、日本語でコミュニケーションを取るというハードルがあります。間違いなく日本人の介護人材に提供している教育を上回る労力が必要になるでしょう。苦労や困難は必ず発生します。しかし、この苦労や困難は将来生み出される好循環への「投資」と考えてください。

まとめ~「まずは一期生」が生み出す好環境に向けて

日本の介護人材は確実に不足するので、何も手立てを講じなければ、介護施設の運営や介護事業の経営は立ち行かなくなるでしょう。

外国人介護人材を採用することは、その打開策になります。

まずは一期生を雇用しましょう。

一期生が雇用できたら、続いて二期生・三期生を採用する計画を作成してください。

外国人の教育が一番大変なのは一期生です。二期生以降は一期生が先輩の立場で後輩に指導できます。一期生は日本人スタッフと二期生との橋渡しができるため、一期生よりも教育への労力が少なくなることは確実です。

三期生の採用時点では「先輩がいる安心感」が応募動機の1つとなるでしょう。

また、在留期間が満了となれば帰国の途に就きます。自分が働いた介護施設で妥当な待遇を受けた外国人は「日本に行くなら○○介護施設がいいよ」とクチコミを広げてくれます。

このような流れを生み出せば、国民一人当たりGDPが7,000ドルを上回る時代がやってきて、来日する外国人材が減少しても、自らの介護施設には働きに来てくれる、「好循環」を達成することができるのです。

外国人介護人材は、中国を筆頭にアジア各国で奪い合うことになります。そのとき「やっぱり介護の仕事をするなら日本の◯◯介護施設」と思ってもらえるように、今から準備していく必要があるでしょう。