技能実習制度の「闇」~制度欠陥が生んだ悲劇~

無能な監理団体を生む技能実習制度の欠陥

6月14日(火)の共同通信社により報じられた記事、裁判長も同情、妊娠したベトナム人技能実習生に冷たかった日本 借金抱え、受診も断られ、企業と監理団体は「気付かなかった」 | 47NEWS (nordot.app)を読まれた方も多いと思います。(是非、記事をお読みください)このようなニュースが伝えられるたびに、外国人材を支援している身としては強い怒りを覚えます。

外国人材の日本就労について、様々な意見があることは承知しております。ただ、来日した彼女達は日本人がやりたがらない仕事を日本人に代わってやってくれており、それが日本を下支えしていることに疑いはありません。そして、彼女達は機械ではなく一人の人間です。にもかかわらず人間として対応してもらえない技能実習制度の闇がまたも露呈しました。

監理団体は何をしていたのか?

技能実習制度では「監理団体」というものがあります。監理団体の役割は多々ありますが、そのうちの1つが日本での生活や労働での困りごとで受入法人に相談できないことについて、母国語での相談体制を整えることです。本件記事を読みますと、監理団体の担当者はベトナム人女性の妊娠に「気付かなかった」と言っています。もしかしたら本当に気付かなかったのかもしれません(だとしたら、役立たずでしかありませんが)。

しかし、最大の問題は監理団体の担当者が気付かなかったことではありません。妊娠した女性から信頼されず相談相手にふさわしくないと思われていたことです。妊娠した女性はパートナーの男性と連絡が取れなくなり、非常に困った状態に置かれ、誰かに相談したいと思ったことでしょう。その時、相談相手になるべきは監理団体です。しかし、彼女は監理団体に相談していません。推測ですが「妊娠したら帰国させる」との噂を信じ、相談できなかったのでしょう。そんな噂があることは監理団体として知っていたでしょうし、知らなければあまりに無知・無能と言わざるを得ません。また、入国前の説明で妊娠時の正しい対応方法を伝えていなかった可能性もあります。もしそうだとすれば、これは監理団体としての役割を果たしていない、非常に恥ずべきことであるということを、当事者の監理団体は理解しているのでしょうか。

監理団体は実習生の味方?

そもそも、監理団体とはどのような立場なのでしょうか。外国人技能実習制度における監理団体の設立背景を考えると決して中立の立場ではなく、受入法人に肩入れするのも頷けます。例えば、当社は介護業界に身を置いていますが、介護の技能実習生受入が決まった2017年前後には社会福祉法人や民間の介護事業者が集まって協力し、監理団体を設立しました。そのような監理団体は、言わば受入法人の完全なる身内と言えるでしょう。そのような監理団体が外国人材に肩入れするとまでは言いませんが中立な立場をとることが出来るでしょうか?

外国人技能実習制度の、明らかな欠陥

上記のように、身内同士のかばい合いしか出来ない監理団体の設立を容認している技能実習制度ですが、他にも多くの欠陥があります。今回の記事で特に気になった欠陥についてピックアップしたいと思います。

彼女は、名前程度の日本語しか話せなかったようです。日本での仕事において、農業ではコミュニケーションは不必要との判断なのでしょう。多くの技能実習生は日本語レベルが低くても来日して働くことが出来ます。しかし、本当に日本語でのコミュニケーションは不必要なのでしょうか。例え通常業務において不必要であっても何らかの危険を知らせる「危険回避」に日本語は必要です。またスマートフォンで何でも容易に検索ができるので短期滞在に問題はありません。ただ、職場や地域のコミュニティで暮らし続けるためには、日本語でのコミュニケーションは必要不可欠です。

技能実習制度において名前程度の日本語しか話せないのに来日できてしまう現実は、受入法人も来日する本人も不幸にしてしまいます。せめて介護分野に適用されているN4レベルで受け入れるべきでしょう。

選ばれなくなる「日本」

2022年4月18日「外国人の採用に躊躇している時間はない」でもお伝えいたしましたが、経済力の衰えた日本には、やがて誰も来てくれなくなる可能性があります。人を人と思わない冷酷な対応は、その流れに拍車を掛けるでしょう。悪しき制度によって自らの首を絞めていることは明白です。早く技能実習制度が廃止されることを強く望みます。