なぜ介護職員は退職するのか

慢性的な人材不足が続いている介護業界。どのように人材を確保するか、人事担当の方々は毎日頭を痛めておられるでしょう。そもそも人材を確保するためには、①新規流入者の獲得 ②既存職員の外部流出阻止 の2つの軸が考えられます。少子高齢化で労働人口が減少しているため ①新規流入者の獲得 は容易ではありません。まずは ②既存職員の外部流出防止 で守りを固めることが必要です。

なぜ介護職員は退職するのか、その原因を確認します。

◆ 介護職員の離職理由は「人間関係」が最多

人間関係で悩み、離職してしまう介護士も多いと耳にしますが、令和3年度 介護労働実態調査結果によると離職理由で最も多いのは「人間関係に問題があったため」で、25.3%(4人に1人ほど)の方が人間関係を理由に離職しています。※令和3年度 介護労働実態調査結果http://www.kaigo-center.or.jp/report/2022r01_chousa_01.html

【※上位3項目】

1,職場の人間関係に問題があったため(25.3%)

2,法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため(19.1%)

3,他に良い仕事・職場があったため(17.6%)

他に頻繁に挙げられる離職理由としては、施設の運営環境に対する不満、収入の低さ、未来に対する見通しの不確かさなど、労働環境全体に関連する問題があります。これらの事実を考慮すると、介護職そのものを好きであるにも関わらず、人間関係や職場環境が適合せず、結果的に離職を選択する人が多いことが推察されます。。

◆ 離職者の勤務年数

介護現場でもうひとつ問題点としてあがっているのが、短期間での離職が多いことです。   

令和3年度介護労働実態調査結果によると、一般の介護職員の3年未満の離職率は61.9%となっており、職員の定着率の低さがうかがえます。

◆ 介護職の離職率

介護職に対して、離職率が高いという印象を持つ人は少なくありません。しかし、令和3年度 介護労働実態調査結果のデータによると令和3年度の介護職全体の離職率は14.1%となっています。全産業の離職率は13.9%でしたから介護職全体の離職率は特別高いというわけではなく、ほとんど平均に近い数値です。

また、介護職の離職率は平成27年度の17.6%をピークに、年々減少傾向しています。

これらのデータから読み取れることをまとめると、以下のようになります。

1,介護職での離職は人間関係や職場環境が主な原因となることが多い。

2,新人の定着が難しい傾向がある。

3,介護職の離職率は他の産業と比較して平均的な数値であり、年々その率は減少。

4,離職率の高さよりも、離職の理由(人間関係)に課題が存在している。

◆ なぜ人間関係が悪くなるのか

では、具体的にどのような原因で人間関係が悪くなるのでしょうか。人間関係と一言で片づけるには多岐にわたる理由があります。その理由を把握しないと対策は打てません。以下に、介護現場で人間関係が難しくなりがちな理由をあげてみました。

<現場スタッフの多様性>

介護職には20代から70代までの広範な年齢層が含まれ、また、職種も多岐にわたります。これらの多様性は、意見の食い違いや、人事異動の少なさなどからストレスを生むことがあります。

<関係者がとても多い>

介護職では入居者・利用者、同僚、利用者の家族、他機関のスタッフと多方面にわたり関わります。これによりコミュニケーションが難しくなり、ストレスが増大します。

<入居者・利用者とのコミュニケーション>

入居者・利用者からの暴言や暴力、わがままな要求、コミュニケーションの困難さなどは、介護職のストレス源となります。

<人手不足と過重労働>

介護業界では人手不足が常態化しており、一人ひとりの業務量が増え、休憩時間が削られるなど、疲労が蓄積されやすい状況が続いています。これは人間関係の問題を引き起こす要因となります。

<スタッフの育成環境が整っていない>

新人スタッフの育成に必要な時間を確保できない施設が多いのも、人間関係が難しくなる一因です。新人は不安を抱えたまま業務を続けざるを得ない状況が生じます。

理由が異なれば対策が異なります。職員の定着率が良くない場合はどれに当てはまるのかを考えることが大切です。次回は主な対策について考えてみたいと思います。