インドネシア特定技能介護士 離職率 脅威の0.8%の裏側 その1

はじめに

厚生労働省の最新統計によれば、2 0 2 3年時点で介護分野で働く外国人の在留者数は約4万人に達しました。この数字は、0 8年から始まった経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者の受け入れや、1 7年からの技能実習制度での介護実習生の受け入れ、そして1 9年に新設された在留資格「特定技能」など、外国人労働者の受け入れ政策が進んだ結果です。

当社は、インドネシアから特定技能介護士の教育、受け入れ、定着において事業を行っています。2 2年3月から入国が始まり、2 4年1月末時点で1 2 6名の方が当社ルートで入国しました。このうち1名は転職しましたが、インドネシア特定技能介護士の離職率は0.8%です。少子高齢化が加速する中、介護現場では労働者の定着が最大の課題です。外国人労働者を受け入れること自体は難しくありませんが、いかに定着させられるかがポイントです。

特定技能は転職できるからと敬遠される方もいますが、転職できない制度で縛り上げるのは根本的な課題を解決したとは言えません。我々は、受け入れから定着までのプロセスにおいて、適切な人材募集と教育、奨学金プログラムの推進、そして外国人労働者への適切なサポートを提供することで定着させられると考えています。

外国人にとって日本で働く魅力はあるのか

外国人在留者数を増やすには「受け入れ」と「定着」の2方向から考えなくてはいけません。

外国人材が海外で働く目的と日本のプレゼンスの低下

1つ目は受け入れに関してです。海外で働くことを希望している東南アジアの方々は働きたい国を吟味して選んでいます。選ばれる基準として、賃金、在留資格や言語習得の難易度、安全性などです。日本は東南アジアの方々にとって一つの人気国であるものの、昨今の円安は大きなマイナス要素と言わざるを得ません。海外で働くことを希望する東南アジアの方々は外貨収入で家族を支え、貧困からの脱却が最も強い目的です。

日本に働きに行くための借金の実態

また一般的には日本入国前に日本円で3 0万円から5 0万円ほどを現地送り出し機関やブローカーに支払います。これは日本に働きにいくための教育費、ブローカーへの手数料などにあてられています。しかし、平均月給が日本円にして1万円から2.5万円程度の対象者がこのような金額を捻出するのは難しく、家族や親戚、あるいは送り出し機関からお金を借りて来日する方がほとんどです。この円安下での借金返済は返済期間が長くなることから、日本が選ばれにくくなる一つの要因です。

 言葉の壁~日本語はマイナー言語でありながら習得が難しい

更に言語習得の大きな壁があります。日本語は世界から見るとマイナー言語でありながら習得難易度が高いと言われています。言語習得と在留資格取得は密接な関係があり、各在留資格で定められた日本語能力をクリアしない限り在留資格は取得できません。それ以上に雇用側が求める日本語能力はレベルが高く、短期間で習得し得るものではありません。

日本で働いてもらえるような条件の整備を

まとめると、賃金が目減りしている中で、日本で働くために借金をし、難易度の高い言語を習得しなければ働きに行けない国ということです。これまで鎖国してきた日本が、なぜ外国人労働者受け入れに大きく舵を切り始めたか。それは予測されていた少子高齢化の現実が如実に表れ始めたからです。だとすると、いかに条件を整え、日本の産業の下支えをしてもらうかを考えなければいけません。

外国人労働者の離職率が高い介護施設の特徴

これまで多くの介護技能実習生や特定技能介護士と接してきた経験から定着しない理由がみえてきました。

採用コスト重視のみの施設~借金返済のため条件の良い職場へ転職

最も多い理由は多額の借金を負い、返済目途が立たない方です。外国人採用に関して採用コスト重視のみで考えている法人には定着しない傾向にあります。前述したように、母国から来日するためには日本語及び介護教育を半年以上受けて要件をクリアしてからです。ここには一定のコストがかかります。本人が負担するのか、それとも受入側が負担をするのか、折半でいくのか。受入法人に対し極端に安いコストを提案されたということは本人に負担をさせていると思って間違いありません。これは本人若しくは家族に潤沢な預金があるわけではなく、借金し支払うケースが殆どです。そうすると日本に入国さえしてしまえば、あらゆる求人情報に触れることができます。SNSを通じて良い条件の仕事を探し転職することができます。

目先のコスト重視で自社支援する施設~十分なフォローができずミスコミュニケーションによる人間関係悪化から転職

次に、ミスコミュニケーションによる「人間関係」です。在留資格を取得するために最低限の日本語学習は、あくまでテスト勉強です。技能実習制度や特定技能で定められている在留資格認定基準は日本語能力試験JLPTのN4 レベルです。これは一般的に小学生低学年レベルと言われています。また受け入れた現場へ日常会話ができる方が来日すると教えられています。しかし、来日してみて殆ど日本語が通じないことに驚きます。

また仕事上で指示されたことをやれないと評価が下がると意識し過ぎて、わからなくても「はい。わかりました」としったかぶりをしてしまいます。結果、ミスに繋がり、注意される、または叱られます。よって入国前にしっかりと会話のトレーニングをすることが絶対的に必要です。

しかし、ミスコミュニケーションは事前教育だけでは解消しません。日本人同士の会話であってもミスコミュニケーションは生まれます。必要以上に第三者がサポートする体制を作らなくてはいけません。

例えば、大きな声で叱られて自分の評価が下がったと感じる方がいたとします。ところが、よく聞いてみると指導した方は元々声が大きい方で、叱ったのではなく注意した程度だったことが判明します。叱られた、注意した、大きい声、これはどれも主観的な感じ方の問題でもあり、ミスコミュニケーションが生まれるきっかけです。

先輩や上司には遠慮して相談できない方もいます。相談サポートなどがなければ、自信を無くし、積極的になるどころか塞ぎ込んでしまい、やる気がないと評価されてしまいます。特に入国直後は日本語能力が低いため上手く伝えられない方もたくさんいます。 

第三者に母国語で相談できれば早期に問題を抽出し、解決できることはありますが、目先のコストを優先しすぎ、自社内支援で行うと、このような問題が多くなる傾向にあります。

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