特定技能「介護」試験合格者が在留者数の2倍を超える年も。その理由を考える。

近年、日本における外国人労働者の受け入れが拡大し、その中でも特定技能1号の介護分野における在留者数が増加しています。出入国管理庁の資料によると、2023年12月末時点での特定技能1号介護分野の在留者数は28,400人に達しました。これは2022年の16,081人、2021年の5,155人と比べて大幅に増加しています。この背景には、特にアジア諸国からの人材が多数を占めていることが挙げられます。

国別の特定技能1号在留者数の推移

特に目立つのは、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、フィリピンなどの国々からの在留者数の増加です。例えば、ベトナムからの在留者数は2021年の2,730人から2022年には5,958人、2023年には7,937人と急増しています。同様に、インドネシアからの在留者数も2021年の574人から2022年には3,928人、2023年には7,411人と大幅に増加しています。

特定技能試験合格者数の推移

一方で、日本国内でのテストに合格した外国人の人数は増減の動きに特徴があります。2020年には6,935人、2021年に13,235人と急増し、2022年も11,293人と高い水準を保ちましたが、2023年には年間8,856人と若干落ち着きを見せています。

注目すべき点は、単純計算ではありますが日本国内でのテストの合格者数が在留者数よりも多い年度があるという点です。例えば、2021年の合格者数13,235人に対し、同年の在留者数は5,155人であり、全ての合格者が就労しているわけではないことが示唆されます。この背景には、特定技能1号の在留資格を持つ外国人が必ずしも介護職に留まるわけではない現実が存在するのではないでしょうか。

仮説としての「コロナ禍の影響」

ここで仮説として考えられるのは、コロナ禍において帰国が困難となった外国人材が特定技能の介護分野のテストを受け、一時的に介護職に転職した可能性です。コロナ禍による渡航制限や経済的な影響で、母国に戻ることが難しくなった外国人労働者が、日本国内での就労を続けるために介護職に就いたものの、以下の理由により短期間で離職するケースが多かったのではないかと考えられます。

介護職の過酷さ

介護業務は身体的にも精神的にも過酷であり、多くの外国人労働者が長期間働き続けるのが難しい状況です。

言語・文化の壁

日本語能力や文化的理解が十分でない場合、利用者や同僚とのコミュニケーションが円滑に進まず、ストレスが増大することが考えられます。

コロナ禍がもたらした特定技能制度における介護業界への影響

コロナ禍により、技能実習生や特定技能労働者の帰国が困難になり、日本国内での再就職を余儀なくされた人々が多かったとはいえ介護分野は慢性的な人手不足に直面しており、特定技能制度がこのギャップを埋めるための一助となり得た可能性はあります。しかし、仕事の過酷さや言葉によるコミュニケーションが必須となる職場において言語・文化の壁などの課題が浮き彫りになったのではないでしょうか。

特定技能制度の本来の目的は、即戦力として活躍できる外国人材を確保することですが、直近では多くの外国人労働者が介護職を離れる結果となっています。これにより、介護現場での人手不足が解消されるどころか、さらに複雑な問題が生じている可能性があります。

まとめ

以上のデータ分析と仮説から、特定技能「介護」在留者数の増加と介護テスト合格者数の矛盾の背景には、コロナ禍による外国人労働者の一時的な介護職へのシフトと、その後短期で離職したことが示唆されます。今後は、介護職に就くことを自ら選択し、必要な知識や日本語能力を身に付け母国から日本に入国してくる人材が主流になると考えられるため、離職率は改善していくことが期待されます。但し、適切な支援がなければ、離職率の改善は難しいでしょう。

この課題を解決するためには、介護職の労働環境の改善や、日本語教育・文化理解の支援を強化することが求められます。特定技能制度の更なる充実と合わせて、外国人労働者が長期的に働きやすい環境を整えることが、今後の日本の介護分野における重要な課題となるでしょう。