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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

闇に活路あり

第十四章其のニ


更新日:2010.3.12
昭和の天才「大塚正士」其の二

■ 販路と価格の維持

大塚さんの素晴らしいところは、これにとどまらずオロナインH軟膏の次の大ヒットとなった「オロナミンC」を薬としてではなく清涼飲料水として、 販路を従来の薬問屋や薬局のルートではなく、一般の小売量販店を選んだところにもある。

この時は「これまでの商慣習に反する」として全国の薬問屋からボイコット運動が起きた。 しかし、大塚さんは「薬問屋が全国に何軒あるんや? それより全国の量販店や町のお菓子屋さんが、ラムネやジュースの代わりに売ってくれたら、 どれくらいもうかるか考えろ」と社員にハッパを掛けた。そうした精神が次の「ポカリスエット」につながっていく。

二〇〇〇年四月に八十三歳で亡くなられた大塚さんから私はビジネスの根幹を教えていただいたが、商品戦略に関しては意見が異なった。 私のターゲットを絞った展開に対し、大塚さんは「春山さん、大塚製薬は一億二千万人の恋人を作ってきた。オロナミンCは銀座で働くOLから 地方の子供まで皆が飲む」と言われた。

牛乳が一本十七円の時代に百円で売り出して、量販店でも値崩れせずにこの価格を四十年以上維持した。これは確かに天才的な才能がなければ 出来ない商売だ。「春山さんには、一億二千万人の恋人は作れないやろ」とも言われた。

私は、大塚さんは昭和型のビジネスマンとしては天才だと思っているが「これからの時代、本当に一億二千万人の恋人を作る必要がありますか? 確かに物のない時代はそれでよかったでしょう。しかし、これからは違う。私は一億二千万人の恋人は作らない。代わりに百万人を“釘付けにする商品” を考えたい。もっと言えば、その百万人のうち三十万人にとっては“よだれを流すほど欲しくて欲しくてたまらない商品”にする。さらに、 そのうちの十万人は“年金をすべてはたいても欲しい”という商品にする」と反論した。

■ すき間のガリバー

これから重要なのは、ターゲットを絞り込んだマーケティングに基づく「ニッチ(すき間産業)のガリバー」を目指すことだ。 たとえすき間と呼ばれる分野でも、その中でガリバー的な存在になれば、自分でルールを作ることができる。 私は二十一世紀の日本のビジネスが生きる道はこれだと思う。


(次回に続く)





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