更新日:2011.1.21
スピード遅い大企業 其の一
ある大手電機メーカーA社と、世界初の人間洗濯機を完成させ、二〇〇三年二月からリリースしている。
これまで提供されていなかった業務省力化という高付加価値が受け入れられ、
高価格ではあるにもかかわらず医療介護マーケットで予想を上回る売り上げを記録している。
■ 速度が遅い開発
しかし、この開発にも秘話がある。
A社の経営トップと私が提携したのが三年前。
すでに基本コンセプトを独自で完成させていた私の新商品企画を「よし、やろう」とトップダウンで決断し、開発に着手した。
担当はA社グループの洗濯機部隊。ちなみにこの部隊はシェアナンバーワンの実績を誇るという。
ところが、洗濯機が売れない時代になり、彼らは起死回生を狙って私の開発プロジェクトに、社を挙げて参画してきた。
今回は、私が開発から量産企画、そしてマーケティングまでのすべての事業推進を指揮し、「よーいドン、この指とまれ」方式で進めることになった。
A社にもかなり戸惑いがあったようだが、プロジェクトが進むにつれ、私にもなんとも言えない徒労感が生まれてきた。
一言で言うと「何でこんなにも速度が遅いのか!」ということ。 ため息の出るような思いで企画チームを眺めてみると、そこはグループ企業内の仲良しクラブ。
一方で横の連携がまったくない大企業としての弊害。
しかし、彼らには、妙なプライドも存在していた。
自分たちの経験則だけですべてを進めようとし、新しいものにチャレンジするときに最も大切な「学び、まねる」という姿勢がまったく見られない。
デザイン一つにしてもそう。
いくら指示を出しても、相変わらず白物家電から脱却できないプランばかりを提示された私は、 「お前たちは社内メールやインターネットをバカみたいに使っているだろう。
なぜ新しいものに取り組むとき、参考事例として海外のヘルスケアや入浴というキーワードから検索して、
何千というサイトに紹介されている良質なコンセプトをまず盗んで学習しようとする姿勢がないのか」と叱った。
(次回に続く)
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