介護業界で増加しているベトナム人技能実習生 特徴や実態は?

平成29年11月より介護職も対象となった外国人技能実習制度ですが、受け入れ人数がトップクラスの「ベトナム人」技能実習生が注目を集めています。今回は、ベトナム人の技能実習生の特徴や、今後の課題などについて調べてみました。始まってまだ間もない介護業界の「外国人技能実習制度」におけるベトナム人実習生の状況を知り、今後の受け入れや運営の参考にしてください。

増加しているベトナム人の外国人技能実習生

外国人技能実習制度は機械・金属関係や食品製造、建設関係などさまざまな分野ですでに実施されている制度で、簡単に解説すると「日本の技術を他国の方に実際の現場で学んで自国に持ち帰ってもらおう」という趣旨の制度です。平成29年3月現在、日本政府が認定している国は15か国(中国、インドネシア、ベトナム等)で、外国人技能実習生の数は平成28年末に中国を抜いてベトナムが1位(38.6%)になり、受け入れ人数の多さから注目されています。
政府は介護分野におけるベトナム人の外国人技能実習生受け入れを平成29年11月から開始しました。介護分野の受け入れ人数が3年で1万人増えることを見込んでおり、国内の介護人材確保につながることも期待されています。

ベトナム人の技能実習生の特徴

ベトナム人技能実習生ときくと、外国の方なのでどんな特徴があるかなどイメージがわきにくいと思います。ここでは、一般的なベトナム人技能実習生の特徴を解説します。

親日的で素直で真面目、若く物覚えも早い

ベトナム人の技能実習生は、一般的に素直で真面目、親日的だと言われています。制度の特徴上、やはりこれからしっかりと学んでいく人材なので「若い人」が比較的多く、物覚えも良いため仕事をきちんと覚えてくれるという面があります。ベトナムは儒教の教えがあるため教育熱心な国でもあり、ベトナム人もそういった国のあり方から、新しい知識を貪欲に吸収する方が多いのでしょう。

日本や韓国と同様に儒教文化がある(目上の人を敬い、お年寄りを大切にする)

先に少し触れましたが、ベトナムには韓国や日本と同様に「儒教文化」が根付いています。儒教文化がある国の方は目上の人を敬い、お年寄りを大切にする傾向があるということで、介護の現場でもその特性は役立ちます。基本的には「お年寄り」を利用者として接する機会が多い介護業界では、儒教思想のあるベトナム人技能実習生は重宝されます。

日本に来る前にベトナムの訓練学校で訓練をしている

ベトナム人の技能実習生に限った話ではありませんが、外国人が実習制度を希望する場合、日本語能力試験などで一定のレベルに達する必要があります。ベトナムには外国人技能実習生の訓練校があり、日本に入国する前6~10か月は訓練学校で生活・訓練をしてから来日します。
訓練内容は日本語の授業以外に、実際に配属される業界の実務訓練などがあり、来日前にトレーニングを受けているため、はじめからある程度は日本語での仕事上のコミュニケーションが取りやすいと言えます。

ベトナム人の技能実習生をとりまく課題

受け入れ人数を増やし、労働力の確保としても期待されている介護業界の技能実習生ですが、とりまく環境を見てみると「今後の課題」が少なくありません。ここでは、ベトナム人技能実習生の大きな「課題」を3つ解説します。

最低時給を下回る賃金で働かされている場合がある

ベトナム人技能実習生は、あくまで「技術を学びに来る」という趣旨があり、一般的な労働者とは少し異なる立場、かつ外国人ということで、日本のスタッフよりも低い「最低時給を下回る賃金」で働かされている場合があります。低賃金で労働力を酷使するということは、当然ですが不満が出やすくなってしまい、働きが悪くなってしまう、最悪の場合は後述のように「失踪してしまう」といったことも考えられます。
いくら学びに来ている立場とは言え、実際には「出稼ぎに来ている」という感覚のベトナム人が多く、そういった立場を利用して低賃金で働かせることは今後大きな改善すべき問題だと言えます。

失踪するケースも多い

日本人では考えられないような低賃金で働かされていることもある、という実情からもわかるように、外国人技能実習生は職場で良い待遇をあまり受けられないことも少なくありません。なかには、賃金の問題だけではなく、「いじめ」にまで発展しているケースもあり、そういった労働環境の過酷さから技能実習生が「失踪」してしまうのはよくある話です。来日から早い段階で失踪してしまう例も多く、失踪するベトナム人のなかには、より高収入が見込める仕事に違法で「転職」している方もいます。
そういったことを防ぐためには、できる限り日本人と同じように扱い、待遇面も整えておくなど「職場を離れたい」と思われてしまわないような努力が必要です。

日本語がうまく話せない(コミュニケーションがとれない)ことがある

いくら来日前に日本語トレーニングを受けているからといっても、やはり6~10か月しっかりと学ぶだけでは語学の習得は難しく、仕事の現場でうまくコミュニケーションがとれないこともあります。仕事をともにする同僚としては、日本語がうまく話せない相手と働くことで、仕事以外の「雑務(伝える手間)」が増えてしまい、冷たく当たってしまうことも考えられます。コミュニケーション能力を一定水準以上に上げることは今後のさらなる課題と言えるでしょう。

まとめ

今後も増加が見込まれるベトナム人の外国人技能実習生の受け入れは、介護業界においても貴重な人材確保につながる、メリットの多い制度です。受け入れを行う際は、失踪などのトラブルを防ぐためにも、単純に「安い労働力」とみなすのではなく、日本人同等の賃金を払ったり職員同士のコミュニケーションに気を遣ったりといったことが大切です。また、介護施設が受け入れる場合はさまざまな要件が必要になるので、実際に技能実習生を受け入れることを検討している施設は、きちんとチェックし、注意しておきましょう。