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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

闇に活路あり

第三十六章其の一


更新日:2013.9.11
健康は永遠ではない 其の一

身体の不自由な人と健康な人の間にある様々(さまざま)な障壁を取り除き、障害をもっていても暮らしやすい社会環境をつくるという意味の「バリアフリー」という言葉は、すでに日本の社会に浸透した。「高齢者のためのバリアフリー住宅」などと銘打った新聞広告もいたる所で目にする。
まさかこんなにもバリアフリーという言葉が普及するとは夢にも思っていなかった。実は私が日本で初めてバリアフリーという商品コードを十数年前につけたことに端を発す。ある大手製薬メーカーから新しいタイプの自動販売機の開発依頼を受けてのことだ。
薬づけから健康志向へと時代が変わり、一方で高齢化が急速に進む中、製薬会社も生き残りをかけて新しい市場の拡大に躍起で、販売拡大のアイテムとして車椅子利用者や高齢者向けの自動販売機を開発中だった。しかし、コンセプトと販売戦略の壁にぶつかっていた。そこでマーケットリサーチから開発まですべてを私に依頼された。

■ 便利な自販機開発

従来の自動販売機はコインの投入口や商品セレクトボタンは高い位置、釣り銭返却口や商品の取り出し口は屈(かが)まなければ取れないほど低位置にある。
そこで新型の自動販売機はコインの投入口、釣り銭返却口、商品セレクトボタン、取り出し口などすべてを、車椅子に座ったままでも立っていても使いやすいように販売機の中央付近に集めた。またコインの投入口や釣り銭返却口には、指先の機能が衰えた人に配慮して受け皿をつけ口幅も広くとった。商品ボタンの表示も写真入りで大きくし、安全性、見やすさ、使いやすさを身体の不自由な人々の立場から十分に考えて開発した。

しかし、バリアフリー商品の開発における最も大切なポイントは、健康な人にもまったく違和感なく使え、むしろより便利だと感じさせることができるかどうかにかかっている。
両手に多くの荷物を抱えて自動販売機の前に立ったとき、コインの投入口はバラッと流せるように受け皿があって大きいほうがいい。ミニスカートの女性にとっては、取り出し口が従来のものより高い位置にある方がありがたい。体の不自由な人々にとってのバリアーを取り除き、なおかつ健康な人にも違和感なくより便利なもの。それこそが本物のバリアフリー商品なのだ。


(次回に続く)







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