更新日:2013.10.9
健康は永遠ではない 其のニ
■ 誰も一時的健康者
ここで紹介した私のバリアフリーという概念には、「人は誰でもテンポラリーアビリティー=vという逆説的な考え方が投影されている。テンポラリーアビリティー、それは「一時的な健康者」という意味になる。
例えば健康な人が何気なく使っていたこれまでの自動販売機は、実は車椅子利用者だけでなく妊婦、高齢者、怪我(けが)をした人などにとっても使いづらいものだった。臨月の女性が大きなおなかを抱えて、あの低位置の取り出し口まで屈むのには一苦労する。歩行には大きな支障がなくても、屈んだり立ったりの動作が難しい高齢者も意外と苦労する。
またサッカー少年が足に怪我をしてギブスをはめた時、サラリーマンがゴルフで腰を痛めたときなど、健康な人にとってはそれまでなんの違和感も感じなかったものが、状況によっては大きなバリアーに変わることもある。そんな時、健康な人は実は一時的な障害を持つことになる。しかし誰も妊娠中の女性やギブスをした子どもたち、そして腰を屈めるのがつらい高齢期の人々を、シーンによっては一時的な障害にみまわれているとは意識しない。
遊び盛りの子どもに怪我はつきもの。多くの女性は妊娠という不自由な時期を経験する。働き盛りの男性だって、いつ身体に変調をきたさないとも限らない。そしてどんな人にも、必ず老いは訪れる。
(次回に続く)
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