更新日:2009.3.11
何が日本を狂わせたのか 其の一
日本が「おかしくなってきた」という兆しを、昭和五十年代中盤に厚生省若手官僚の一部は既に
持っていた。日本が豊かになり「死なない、死ねない」社会の到来に加えて、
医療界が「死なせない」時代にはいったころだ。
■ 医者至上主義の愚
「何を置いても、どんなことをしても命を永らえることに意味がある」というのが
当時の日本の医療界の倫理だった。
この時期、官僚は「あれ?年寄りが死ななくなってきたぞ」と首をひねるようになった。
長寿社会という言葉ができたころだ。一方で寝たきり老人の要介護年数が平均五年七ヶ月で、
世界一になっていることにはまだ気付いていなかった。
「長生きはよいこと」という『正論』が薄っぺらな優しさとともに広がり、
その一方で延命医療にどれだけコストが掛かるのか誰も関心を持たず、
その結果、医療と措置費は膨張しだした。
極めて経済的な倫理で「医師」という技術者としての免許を取っただけの多くの医者たちに、
銀行はその倫理観や経営能力の有無を検証せず開業資金をちゅうちょせずに貸し付けた。
(次回に続く)
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