更新日:2009.5.20
尊厳ある死生観とは 其のニ
■ 臨終医療がもうかる
日本の年間医療費31兆円のうち老人医療は11兆円。その大半は医療ではなく介護に使われる。
そして、あまり知られていないが、臨終直前の二週間に使われる老人医療費こそドル箱なのだ。
死の直前にいろいろなチューブで体内に薬を注入するが、あの抗生剤一本が2万5千円する。
1人平均で6本は使う。
そして、心停止に陥ると医師は「電気ショックを入れますか」と、家族に相談する。
家族は当然「できるだけのことをしてやって下さい」と同意する。あのカウンターショックが
一発3万5千円するなんて誰も知らない。これが患者の死後、レセプトとしてほとんど自己負担なく
国に請求されて医療費は膨らむ仕掛けになっている。
■デンマークの実例は
欧米では、臨終間際の延命行為に対して医療費はほとんど支払われない。人としての機能を終え、
心停止を迎えるのは自然の摂理であり病気とは考えないからだ。
デンマークの小児医療は世界でもトップレベル。かけるものにはかけて無駄なものは削減する潔さ。
そして命の見切りと選択がある。例えば、教育も医療も国の責任ですべて行うが、いったん老人介護の
範ちゅうに入ると県の責任になる。すみ分けがキチッとできていて、県が引き受けないと国は
ペナルティーとして1人1日200万円を要求する。国と県でも明確な義務と責任を線引きする。
そして特別養護老人ホームに入ったら、医療行為は一切しゃ断されてしまう。正確に言うと
風邪薬と睡眠導入剤などは提供するが、人間としての生活と心を支えて尊厳を持ったまま
“枯れる”のを待つ。人生の最期を『長さ』ではなく『質』で追求する。特別養護老人ホームの
平均入所期間を調べると半年から一年半。それを超えるケースはほとんどない。日本では、
5年から15年は生きる。
(次回に続く)
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