更新日:2009.11.20
「グッドタイム」の真の意味 其のニ
■ 深夜の老人酒場
コペンハーゲンで夜の十時すぎに仕事が終わり、とにかくノドが乾いたので「どこかでビールを飲もう」ということになり、
われわれのスタッフや現地の取引先の人々と町の酒場に向かった。ソーセージをアテにビールでも飲もうと思ったが、
時計は既に十一時に近い。
われわれは、街角のどこにでもありそうな酒場に入った。中はもうもうたるタバコの煙で、お年寄りたちがうまそうに酒を飲み、
テーブルでゲームに興じたり、語り合ったりしていた。私はまるで「老人酒場」に迷い込んだような気分になった。
首をひねり、スタッフに「表の看板に老人酒場と書いてあるか見てこい」と命じたくらいだ。そこには本当に一人の若者もいなかった。
ウェイトレスがビールとソーセージを運んできてくれたので「ここは年寄りのお客さんばかりですね」と声を掛けた。
そうすると、現地の取引先の方が「春山さんそうじゃないんです」と前置きして説明してくれた。
「午後九時すぎまでは若者はいっぱいいるんです。彼らはテレビでサッカー観戦している。しかし、午後十時になると翌日の仕事があるので
帰っていく。そして入れ替わるようにお年寄りたちが店にやってくるんです。彼らには時間がある。だから、十一時をすぎるとそうした
逆転現象が起こるんです」と言う。
私は「へぇ〜」と感心したが、まだ頭の整理がつかなかった。ちょうど隣に座ったお年寄りのグループが話しかけてきたので、打ち解けて
話し合ううち私の方から質問してみた。
「こんなに夜遅くまで、飲んだり遊んだりしてお体は大丈夫なんですか?」
すると彼らの一人はニコッと笑って、うまそうにビールを飲みながら「心配するな。あの世に行ったら嫌というほど眠れるんだから」。
(次回に続く)
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