更新日:2009.12.4
「グッドタイム」の真の意味 其の三
■ 自己責任と逆指名
あのお年寄りの言葉は単なるジョークかもしれない。しかし私には、その言葉がカルチャーショックを越えて、
何か自分で気付かなければならない新しい価値観へと導いてくれるヒントになった。
この人たちは沈みゆく夕日を知っている。九時ごろまでけん騒の中で酒場で楽しんでいた若者たちのように、彼らの体内時計は真昼の太陽をもう持って
はいない。午後四時か五時か、ひょっとするともっと遅い時間なのか、いずれにせよ自分の中の夕日を知っている。
しかし、そうした限りある時間の夕日だからこそ、残された時間の使い方を自らが逆指名して決め、明るく輝かせる。私は、彼らの生き方に強い自己責任と
逆指名の意志を感じた。
私はその国で「グッドタイム」という言葉を覚えた。年金受給者のための機関紙のタイトルも、その「グッドタイム」だった。
多分日本だったら「老いに備えて」とか、非常に清く暗く貧しいそして人生のおまけのようなタイトルをつけるのに、彼らは自ら「グッドタイム」と
呼んでいる。アメリカには「ハッピーリタイア」という表現もある。
私はこの瞬間から「グッドタイム」というキーワードが忘れられなくなった。
(次回に続く)
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