更新日:2011.5.6
己の幸せのために働け 其の二
■ 自己破産は破廉恥
最近、自己破産という法的な救済策が妙にブーム化している。
昨年は年間二十万件を超える申請が裁判所に寄せられたという。ローン地獄、カード地獄、悪徳商法、こういった黒いクモの巣に引っ掛かって救いを求める例が後を絶たないという。
しかし、忘れてはいないか。自己破産こそ、人間にとって最も破廉恥な行為でもあることを。
数年前、テレビタレントが、ワイドショーで涙ながらに自己破産に追い詰められるまでの物語をさらしてくれた。
「最初は、別れた妻への慰謝料の支払いから始まったのですが、気がつけば雪だるま式に借金が膨れ、金融業者のわなにはめられたあげく、『十一(といち)』の高利にも手を出してしまいました。もうこれしかなかったんです。自殺も何度も考えたんですよ」と。
私こそが善意の被害者だと言わんばかりのパフォーマンスを、全国放送でとうとうと伝える。
国民の多くは、被害者としてのタレントの地に落ちた姿を、哀れみと同情を交えた「これこそ対岸の火事」と見物するが、私は思わずテレビの前で叫んだ。
「お前は被害者じゃない。高利と知りながら契約書にサインをして、理由はどうあれ汗しない金をむさぼりながら、それを自己破産で反古(ほご)にするお前こそ、
社会の加害者だ」。
決して金融業者の味方をするのではない。額に汗して働く立場から、この奇弁は許せなかった。
甘ったれるな。
地獄のふたを開けてみた私にとって善意の被害者を演じる映像は我慢ならなかった。
(次回に続く)
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