更新日:2011.7.1
消えたビジネスマインド 其の三
■ 泥仕合はまっぴら
ディーラーが三十社を超え、わが社の商品シリーズが「高いけれど価値がある」と認知されだしたころ、事務機器メーカーでは日本一の会社が提携を申込んできた。
「うちは事務機屋として代理店ネットが全国に七百社あります。わが社としては異例ですが、是非御社の商品をわが社の定番商品にさせていただきます。
ですからわが社を総発売元にさせてください」
このありがたい申し出もすげなく断った。
「うちは零細企業です。コツコツ一社一社と手を組んでやっていきますよ。もしその一社として参画を希望するなら、喜んでディーラーになってもらいますがね。
大丈夫ですよ。お宅なら日本一のネットワークで勝ち残っていけますから」
大手ベッドメーカー、日本一の事務機器メーカーの依頼をなぜ断ったのか。それは、独占契約を結ぶことによって立場が逆転するからである。売ろうが売るまいが、全国
販売権を渡した以上、私の監督外になってしまう。命を削ってものを開発する身に、これは忍びない。
バブル崩壊地獄の中で悲惨な例の一つが連鎖倒産である。
大手のお抱え業務をたまわり、小判ザメのように生き延びてきた日本の中小企業。大手が、くしゃみをするとすぐに風邪を引き、大手が風邪を引いて寝込むと即、あの世行き。
こんな理念も企業努力も通じない泥仕合に巻き込まれるのは、まっぴらだ。
■ 細くても強い100本
一つの太いロープにすがると、安定運営のように見えながら、いつロープを切られるかと相手の目の色をうかがう。ところが、細くても強いロープを百本持つと、
どのロープが切れてもびくともしない。それどころか、いつでもこちらから切ってやるぞ、と理念を持った経営が継続できる。
(次回に続く)
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