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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

闇に活路あり

第二十八章其の二


更新日:2011.10.28
「生き抜く力」を失った日本人 其の二

■ 借金、難病で幕開け

私は成金の父に育てられ、二十二歳の時、父は見事に会社をつぶした。そのころ私は、ヨーロッパでアルバイトをしながら生計を立てる気ままな生活を送り、自分が何をしていいかわからない、自分探しの旅の最中だった。一年半を経過したころ、家業が倒産したので帰って来いと呼び戻され、気がつくと父の借金も背負っていた。そこから私の社会人としての人生がスタートした。

借金の片付けをしながら、やっとひと息ついて不動産業のおもしろさに目覚めてスタートした矢先、難病(進行性筋ジストロフィー)の宣告を受けた。二十六歳だった。

今振り返れば、私の人生はジェットコースターのようだ。医者が、診断を受けたばかりの、まだ歩いている私に向かって、「春山さん、間もなく車いすの生活になるでしょう」と宣告した。あ然としていると「その車いすもやがてこげなくなるでしょう。電動車いすになって、電動車いすも操作できなくなる。ひょっとすると寝返りもできなくなって、全ての機能を失うかもしれません」とハッキリ言った。

いま考えてみると、全くの名医であり、私の近未来を見事に予言した。ただ私はその時に、「間もなく車いすの生活になるのなら、その前に、私の車いすを押してくれる社員を雇えればいいんだな。間もなく手が動かなくなるのなら、その前に、手の代わりをしてくれる会社というチームが作れればいいんだな。なくしたものを数えるな。体が動かなくとも、人としての尊厳は絶対に失われない。首から上で銭は稼げる」と自分自身に言い聞かせた。

「三人四脚、四人五脚で失ったものを補ってもらいながら、残された機能を120%活性化すれば、絶対に生き残れる。これで私の役割は果たせる」 ―こう決めた。

幸い(あえてこう表現したい)、家は没落商人。借金こそあれ、何もなかった。信用はない、実績もない二十六歳の若造で、そして難病というとんでもないおまけがついた。体の機能を失うのはいつかわからない。キザな表現をすると「運命と時間とのレース」。私は後を振り返らずに新しいスタートを切った。

結果的に見れば、四年間で経済的自立にたどり着くことができた。ただ、その四年間で立つことすらできないほど体力は失われていた。


(次回に続く)





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